ZESDA's blog

グローカルビジネスをプロデュースする、パラレルキャリア団体『NPO法人ZESDA』のブログです。

プロデューシング・システムを創ることで、日本経済の活性化を目指す、NPO法人ZESDAのブログです。


産学連携が成功するための条件とは何か 〜イノベーションと企業家(アントレプレナー)、その可能性の中心〜

先週、政策研究院大学にて、2月20日(月)の18:30より、研究イノベーション学会・主催、ZESDA・共催により、第3回 ブロデューサーシップ論と実践(“個人・若者・女性活躍時代”「プロデューサーシップ論」講座)が開催されました。

産学連携の現状と問題点、その可能条件等について、伊藤正実先生(群馬大学研究・産学連携推進機構教授)と、西村吉雄先生(元日経エレクトロニクス編集長)の両先生をお迎えし、大変貴重なお話を賜りました。

伊藤先生(「産学連携による価値の創出をめざして〜その陥穽と克服への道程〜」)、吉村先生(「産学連携の現状と課題」)のそれぞれのご講演を拝聴し、当ブログ記事の筆者なりに、産学連携についての多岐にわたるお話全体のごく一部分ではありますが、特に触発された問題点について整理しました。

産学連携について、より理解を深めるために、筆者なりに、以下の二つの問いを立ててみました。

⚪️第一の問:そもそも産学連携の目的は何であるのか。

⚫答:産学連携の目的はイノベーションの実現である。

※以下の説明は、主に西村先生のご講演内容から気付いた点について纏めたものです。

イノベーションの正確な定義について、改めて捉え直す必要があります。なぜならば、イノベーションとは技術革新のことである、との一般的通念が広く流通しており、しかし、それはイノベーションについての正しい理解ではないからです。

イノベーションとは、科学や技術とは直接の関係はありません。研究成果や技術革新は、それだけではイノベーションとは言えません。

イノベーションは社会経済上の概念として捉えるべきものであり、それがイノベーションという言葉に含まれている正しい意味・内容だからです。

イノベーションを実現するためには、新たなノウハウ、斬新なアイディアなどの新知識(未来の価格体系)を、競争相手よりも先に知るということ、つまり「知」が必要です。しかし、それだけでは、十分ではありません。現実の市場(消費者)に、新たなノウハウ、斬新なアイディアなどの新知識により創造された魅力的な商品やサービスを送り届ける者、つまり「媒介」する者が必要です。この市場への媒介行為を実行する経済主体が企業家(アントレプレナー)と言われる者です。

経営学の祖であるP.F.ドラッカーは、イノベーションについて以下のように述べています。

“Entrepreneurs innovate. Innovation is the specific instrument of entrepreneurship. It is the act that endows resources with a new capacity to create wealth. Innovation, indeed, creates a resource.”

「企業家(アントレプレナー)はイノベーションを行う。イノベーションは企業家に特有の道具である。イノベーションは富を創造する能力を資源に与える。それどころか、イノベーションが資源を創造する。」
(ドラッカー著「イノベーションと企業家精神」、上田淳生訳、p8、ダイヤモンド社)

イノベーションを実現するためには、「知の創造」と「市場への媒介」の双方の効果的融合が不可欠です。「知の創造」を大学が担い、「市場への媒介」を産業界が担います。典型的にはこれら二者による産学連携によってイノベーションの創出が可能となります。

世界のイノベーションの歴史を振り返ると、「知の創造」は1920年頃まではエジソンのような個人発明家が、1920年代から1980年代にはナイロンの発明がブームの発端となって大企業の研究所が担いました。そして1980年代から現在においては、シリコンバレーに代表されるようにベンチャー企業と大学の連携によってイノベーションは実現されています。このようにイノベーション史をあらためて捉え直すと、現在の時点では、一般にイメージされるところの「大企業付属研究所によるイノベーションの達成モデル」は過去の観念であることが理解されます。

日本のイノベーション政策では、このイノベーションの概念が、大抵の場合、技術革新それ自体のみに限定されたものとして誤解されて理解されており、それが主因となって企業家(アントレプレナー)ではなく、大学等の研究・技術開発への支援(「知」への支援)に偏ってしまっているのが実情です。しかし、イノベーションが「知の創造」と「媒介者」との協働により実現されるものであるならば、むしろ支援を更に強化すべきなのは媒介者である企業家(アントレプレナー)であることは明らかです。特に国や金融機関等による資金援助、融資制度等をはじめとした企業家(アントレプレナー)への支援状況がかなり不足していると言わざる得ません。

⚪️第二の問:産学連携における企業側の制約条件は何であるのか。
⚫答:産学連携の目的がイノベーションの実現であるならば、「媒介者」は管理経営型企業(再生産管理型企業=非企業家)ではなく、企業家(アントレプレナー)でなければならない。

※以下は、主に伊藤先生のご講演内容から気付いた点について纏めたものです。

現在の日本の産業界は、当然のことながら全ての企業が企業家(アントレプレナー)的な性格をもつわけではありません。既存事業の管理経営型企業がほとんどを占めます。管理経営型企業は、再生産管理型企業であり、新規事業の開発はほとんど行わずPDCA型改善のみにしか関心がありません。※脚注1を参照

ここで改めてP.F.ドラッカーの企業家(アントレプレナー)の定義を確認してみましょう。

“Entrepreneurship rests on a theory of economy and society. The theory sees change as normal and indeed as healthy. And it sees the major task in society — and especially in the economy –- as doing something different rather than doing better what is already being done.” Drucker,”Innovation and Entrepreneurship” p25

「企業家精神の原理とは、変化を当然のこと、健全なこととすることである。
企業家精神とは、すでに行っていることをより上手に行うことよりも、全く新しいことを行うことに価値を見出すことである。」
(ドラッカー著「イノベーションと企業家精神」、上田淳生訳、p3、ダイヤモンド社)

“The entrepreneur always searches for change, responds to it, and exploits it as an opportunity.”  Drucker,”Innovation and Entrepreneurship” p28

「企業家(アントレプレナー)は、状況の変化と、その変化への効果的な対応と、変化をチャンスととらえ、その効果的活用について常に意識している。」
(筆者訳)

伊藤先生は、ご講演の中で、企業家(アントレプレナー)のみが産学連携が可能であり、当該企業が産学連携が可能な企業かどうかは、以下のような問いを立てることにより明らかとなる、と述べられました。

(1)企業に新規事業創出や既存事業の高度化の意欲があるのかどうか?
(2)企業の経営資源に余裕があるかどうか
(3)経営者の人柄、資質(特に中小企業の場合)
(4)大学側のパフォーマンスを理解・評価できるか?
(5)大学の文化をある程度理解できているか。
(6)事業全体のプランを主体的に企画できるかどうか?
   ・新規事業創出のための研究開発に対して主体的に取り組めるか?
    (大学に研究開発を丸投げはできない)
   ・大学側に“やって欲しいこと”をきちんと説明できるか?

以上のように産学連携が可能な企業の条件を挙げられた上で、主に、企業内における研究開発体制の有無と売上規模から、現状の企業をカテゴリー1から3に分類されました。

【カテゴリー1】
専任の基礎研究に従事する研究者が在籍している売上高3,000億円以上の大手企業。

【カテゴリー2】
基礎研究を充実化させるよりも、研究開発部門には、主に商品化可能な実用的領域での技術開発などに取り組む技術者等を配置する。売上高20億円から3,000億円程度までの大手、中堅企業。

【カテゴリー3】
研究開発に専従している職員がいない場合が多い。売上高20億円以下の中小企業。

伊藤先生は、当該企業が企業家(アントレプレナー)的性格をもつ企業かどうかや、企業規模等の諸々の制約を客観的に整理・分析すれば、ある程度、日本での産学連携のためのストーリー・イメージをより明確に描くことが可能である、と提案をされました。

西村先生は、世界のイノベーション史において現在は如何なる歴史段階にあるのかを考察した場合、アメリカでは、まさに1980年代以降、インテルに代表されるように、ベンチャー+大学の産学連携によりイノベーションが実践されている、という現状を述べられました。特に、歴史的に偉大なイノベーションを達成したインテルは、かつての企業付属研究所モデルではなく、実際の工場での技術者による生産ライン上での試行錯誤と、解決すべき問題が発生した都度毎のきめ細かな企業と大学の研究室との相互連携によりイノベーションを実現させました。インテルの成功は、<ベンチャー+大学>の産学連携の代表的な事例です。

演者お二人のご講演の後、主に日本の政治経済、文化、歴史などの特性を踏まえた効果的な産学連携はいかにあるべきかというテーマについて、来場された聴講者の方々を交え活発な質疑・議論がなされました。

※脚注1
 PDCA型改善と、イノベーションとの違いについては、以下のブログ記事を参照。
 「ZESDイノベーション研究ノート(1)メタエンジニアリングが、エンジニアリングとは根本的に異なる点についての考察」
zesda.hatenablog.com

Ms. Avena Tan より 「What does “Global Jinzai” mean? – think together with a young professional from Singapore(グローバル人材ってなに?~シンガポール出身の若きプロフェッショナルと一緒に考える~)」 Platform for International Policy Dialogue (PIPD) 第32回セミナー開催のご報告

NPO法人ZESDAは、「官民恊働ネットワークCrossover」(中央省庁の若手職員を中心とする異業種間ネットワーク)との共催、株式会社クリックネット まなび創生ラボ株式会社自由が丘パブリックリレーションズの協力により、在京の大使館、国際機関や外資系企業の職員、及び市民社会関係者をスピーカーに迎え、国内外の政治・経済・社会問題について英語での議論を通じて理解や問題意識を高める、「Platform for International Policy Dialogue (PIPD)」を開催しています。

2月11日(土)の15時から開催した2017年最初の第32回PIPDセミナーは、シンガポールから上智大学大学院へ進学し、日本の大学生と同じ就職活動を経て、日系商社に入社されたAvena Tanさんをスピーカーとしてお招きし、「What does “Global Jinzai” mean? – think together with a young professional from Singapore(グローバル人材ってなに?~シンガポール出身の若きプロフェッショナルと一緒に考える~)」をテーマにお話しいただきました。

今回も株式会社Click Net 社長の丸山剛様、並びに社員の皆様のご厚意で、セミナー会場として同社が主宰する「まなび創生ラボ」をお貸し頂きました。この場をお借りしてお礼申し上げます。有り難うございました。

プレゼンテーションはAvenaさんの自己紹介から始まりました。引っ越しの多い一家で育ったAvenaさんは、中国本土で生まれた後、香港へ移り、何度か引っ越しをしてから、シンガポールへ住むことに至ったそうです。こうした経験は、Avenaさんが後に日本への留学を決意するうえでのきかっけにもなったそうです。
シンガポール人は、同じ環境で、同じ教育を受けて育つため、同質のバックグラウンドを持つことがほとんど」とAvenaさんは指摘します。そうした中、中国、香港、シンガポールと様々な環境で育ってきたAvenaさんは、他のシンガポール人たちと自分との差別化を図りたいと考えるようになり、多くのシンガポール人が選ぶアメリカやイギリスのような英語圏ではなく、日本に留学することを決めたそうです。数ある国の中でも日本を選んだのは、
①当時シンガポールの日本人コミュニティに関わる機会があり、そこで出会った日本人の方々に刺激を受けた、
②日本が東南アジアへ多額の投資を行っていることから、日本企業は自身の経験を活かすことができそうだと考えた、
といった理由があったとAvenaさんは振り返ります。また、Avenaさんは日本の文化にも関心が高く、特に「コタツ」が好きということも、日本を選ぶ決め手となったそうです。

今回のセミナーは、スピーカーであるAvenaさんと昨年夏に2年間の米国留学から帰任したCrossoverスタッフの二宮聖也との対談、そして参加者同士のディスカッションという、これまで以上にインタラクティブな形式で行われました。対談及びディスカッションは、大きく以下2つのテーマに沿って進みました。

【Session1】
What does global Jinzai mean in the Japanese context?
(グローバル人材とはそもそも何か?)

Session1では、「グローバル人材」という言葉に焦点を当て、「そもそもグローバル人材とは何か?」についてAvenaさんと二宮との間で対談を行った上で、参加者同士で「自分はそういう人材か?」、「そういう人材となるには何を変える必要があるか?」という視点で議論を行いました。

対談は二宮からの「なぜ近年、グローバル人材という言葉が話題に上ることが多いのか?」という質問でスタートしました。現在日本の商社に勤務するAvenaさんは、自身の会社を例に挙げながら、海外に多くの支店、支社を持っている日本企業の場合であっても、グローバル人事のシステムがないなど、社内は非常にdomestic(内向き、国内中心)な傾向がみられる点を指摘しました。会社として「現状を変えていこう」という意欲は感じ取れる一方、会社として「グローバル人材」に期待する役割が明確になっていないとも指摘。この点、Avenaさんが上司に「外国人である自分に何を期待しているのか」と尋ねたところ、「日本人のスタッフと同様の役割を果たして欲しい」という返事であったそうです。「内向きな会社の現状を少しでも変えていけるように努力したい」とAvenaさんは笑顔で述べていました。

「グローバル人材を目指す人へのアドバイスは?」という質問に対して、Avenaさんは「“Open Mind(広い心)”を持つことが大切ではないか」と強調されました。また、「そもそも“グローバル人材”という言葉自体、海外では耳にすることがなく、日本国内でばかり語られるはやり言葉ではないか?」と指摘したうえで、以下のように、“グローバル人材”を定義されました。

日本では、“グローバル人材=英語を話す人”、“海外留学を経験したことのある人”、あるいは“日本にいる外国人”を指すように見受けられるが、海外に行ったことのない日本人でも十分、“グローバル人材”になることができる。」
「私が考える“グローバル人材”とは、英語を話せるといったスキル面に由来するのでは必ずしもなく、変わりゆくビジネス環境、人々の考え方に適応していくFlexibility(柔軟性)、Adaptability(順応性)を持った人材ではないか。」

ここで、対談の内容を踏まえつつ、参加者同士で“What does global Jinzai mean in the Japanese context?What do you need to change?”についてのディスカッションに移りました。約10分のディスカッションでは、「海外でも日本人同士で固まってしまう傾向」や、「言語だけでなく、非言語面の文化的なコミュケーションの仕方」についても改善が必要ではないか、グローバル人材を採用する戦略を明確にすべきではないか等の意見が活発に出されました。

【Session2】
How should individuals change to create a better workplace for both foreign and Japanese workers in Japan?
(私たち「一人一人」はどのように変わっていくべきか?)

Session2では「グローバル人材であろうとなかろうと、今後、日本人が外国人と共生していくことが求められる社会において、私たち一人一人がどのように変わっていくべきか」をテーマに議論を行いました。初めに、Avenaさんが日本で過ごす中で感じた日本社会へのフラストレーションや葛藤について、モデレーターの二宮と対談を行い、その内容を踏まえ、参加者同士、私たち一人一人が外国人・日本人の双方にとってwin-winな職場環境、コミュニティを創り出すために、どういうアクションをとっていくべきか、そして「私たち」は明日から何ができるか、という議論を行いました。

初めにAvenaさんから、自身の日本の企業で働く中で感じた葛藤について共有頂ききました。歴史ある日本の商社で働くAvenaさんは、「日本人らしくあること」と、「外国人らしくあること」のバランスを失わないように常に気をつけているとのことでした。つまり、日本企業の本社で働く以上、日本社会に適応していく必要がある一方、自分は「完全な日本人」にはなれず、また周囲からも「完全な日本人」として扱われない中で、外国人としてのバックグラウンドを活かすためにどう振る舞うべきかを考えている、とのことです。

そうした中で、自身が「外国人であること」を周囲に認識してもらい、また、完全に日本人と同様に振る舞うことはできないことを理解してもらえるように努めている、とのことです。例として、社内では、ほとんど敬語を使わないようにしていることを挙げていました。敬語を使っても日本人のような「正しい」敬語ではなく、違和感を与えてしまう、外国人が使っていたら軽く笑われるだけで済むが、日本人が使っていたら間違いなく注意されるような表現になってしまうために意図的に避けていると話していました。一方、日本社会に順応しようと、コーヒーを淹れる、コピーをとる、デスクの掃除等、日本人の新入社員、特に女性が会社の風習として行っていたようなことは積極的に行うことを心掛け、また日本人が行う立ち振る舞いについては常に観察し、勉強しているそうです。他方、そうした日本の文化に順応する姿勢を見せながらも、「“自身はあくまで外国人である”と示すことは忘れないようにしている」と強調されました。

日々、暗黙のルール(protocol, unwritten rule)に気を付けながら生活しているというAvenaさんの話を踏まえ、モデレーターの二宮が、アメリカ留学の際に、自分が初めて社会的少数者(social minority)となったことをきっかけに、同じマイノリティである外国人学生によるグループを組織しアクションを起こした経験を述べた上で、参加者に「How should individuals change to create a better workplace for both foreign and Japanese workers in Japan? What can you do from tomorrow that will make a difference?」と質問を投げかけました。Session1に引き継ぎ、このディスカッションでも各チームで白熱した議論が行われました。

「外国人のスタッフと会話をするきっかけにまず挨拶をしよう」
「日本人、外国人がそれぞれコミュニティを作ってしまう傾向があるので、コミュニティ外でのコミュニケーションを行う」
「外国人(スタッフ)もより日本語を学ぶようにする」

こうした意見が飛び交う中、「普段は英語を話す機会があまりなく、英語に自信がない」というある参加者が立ち上がり「自分に何ができるか考えた結果、まず、この場で勇気を出して英語で意見を発信することから始めたいと思った」という声を会場に響かせました。Session1の議論でも指摘された「まず、自分のmind-setを変えていく」、という「グローバル人材」へのステップを越えていく光景に、多くの人が印象付けられました。

セミナー終了後には、ソフトドリンクとお菓子を用意した懇親会の時間を設け、約40名の参加者及びスタッフがそれぞれ親睦を深めつつ、本セミナーの議論を振り返り、熱い議論を続けました。
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【活動報告】新宿NPOネットワーク協議会主催“第97回市民とNPOの交流サロン”での活動内容報告

2017年1月12日(木)新宿NPO協働推進センターで開催された“第97回市民とNPOの交流サロン”(一般社団法人新宿NPOネットワーク協議会主催)において、代表の桜庭が当団体の事業内容の説明をいたしました。

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「市民とNPOの交流サロン」は、同センターの運営委託を受けている新宿NPOネットワーク協議会が、同センターを利用している各種団体間の交流を促進するために、定期的に開催している交流会です。ZESDAもスタッフMTGやイベントで同センターをよく利用させていただいております。

桜庭からは、なぜZESDAを立ち上げたのか、活動実績や事業運営の内容、組織体制、また今後の展望など、約1時間にわたって説明をいたしました。

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今回の会に参加された方はご自身でNPO団体を運営されている方、区報をみて来られたサラリーマンの方などで、ZESDAのことを初めて知る方ばかりでした。

参加者の方とZESDA側の質疑応答も活発に行われました。「社会福祉系のNPO団体が多い中で経済系の団体の話は新鮮だった。」「これは本当にNPOなんだろうか...!?」というコメントも聞かれましたが、予算規模や収入源、人材の確保、団体運営で苦労した点などのトピックでは、特に話が弾みました。

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今回は、ZESDAのスタッフMTGや勉強会などでいつも利用させていただいてる新宿NPO協働推進センターにて活動報告ができる貴重な機会をいただけましたこと、関係者の皆様に御礼申し上げます。普段のイベントの参加者よりも、少し年配の方々にもZESDAを知っていただく貴重な機会にもなりました。

今後もZESDAの活動内容について一般向けに説明する機会を増やし、多くの方に知っていただくことができたらと思います。

今年もZESDAは新たな活動にチャレンジしていく予定です。
引き続きご支援、ご協力よろしくお願い申し上げます。

岡山県真庭市 郷原漆器の館について

こんにちは。ロンドン支部長兼石川支部長の野崎です。
現在仕事で関わっている岡山県のとある市について、インバウンド向けに非常に可能性がある地域だと思いましたので記事を書かせていただきました。
お読みいただけましたら大変幸いです。


岡山県北部に位置する真庭市という市があります。さらに真庭市の北部、ほぼ鳥取県境に蒜山(ひるぜん)高原という春は新緑、夏はサイクリング、秋は紅葉、冬はスキーを楽しめ、目を見張るような雲海が見られる雄大な土地があります。

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そして、その中に、海外の方から大きく注目を浴びるポテンシャルを持った、「郷原漆器の館」という漆器の生産地があります。

漆器は、諸説ありますが、欧州ではかつて「japan」と呼ばれていました。海外の歴代の王室が好んで使っていた事実もあり、現在も外国の方が漆器、漆だから出せるしっとりとした質感やゴージャスな金の蒔絵、漆黒の美しさに魅了し続けられています。そんな漆も、現在国内で使われている漆の約98%は中国産漆で、国産はわずか2%。漆を採取するために高度な技術が必要とされる、漆掻き職人の減少、その他漆器生産に必要とされる職種での後継者の問題など、縄文時代早期(約9,000年前)からの歴史を持つ日本のを代表する伝統は、残念ですが大きく昔とは状況が異なっています。

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郷原漆器公式HPより抜粋)

蒜山高原には郷原という集落があり、そこでは600年もの間、「郷原漆器」と呼ばれる普段使いの丈夫で美しい漆器が作り続けられていました。
最盛期には年間40万個も生産され、それらは街道を経て松江や出雲地方まで流通していたと云われています。しかし、昭和の代に入り戦争の勃発による人手不足と、漆が統制品になり入手困難になったことも重なり、昭和20年の終戦を境に生産は途絶えてしまいました。

ですが、昭和60年から岡山県郷土文化財団によって調査研究が進められ、その試作品をもとに、平成元年から地元有志による復活生産への取り組みが始まりました。平成4年には「郷原漆器生産振興会」を立ちあげ、平成8年には「郷原漆器」が岡山県指定重要無形民族文化財に指定され、生産拠点として建設され、今日に至っています。

真庭市では、20年程前から漆を植え始め、毎年漆を採取しています。漆の苗木を植えてから成長するまでには約15年から20年を要し、1本の漆の木からはたった200グラム程度の漆しか採取できません。長い歴史と伝統を誇り、日本文化を形成してきた漆。漆器の生産地、漆芸家が必要とするに加え、国宝・重要文化財の修理・修復になくてはならないものとなっています。

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蒜山高原の漆の様子


苗木を植え育てていくことは毎年の手入れや管理の煩雑さ、人手や資金が必要とされることもあり、漆を採取できるまでに育て上げることは容易ではありません。昔から漆器の産地として栄えてきた地域でも、現在植栽に成功しているところはほんのわずか。

真庭市は採取できる漆の数は決して多くはないものの、漆を植え、採取し、漆器を完成させるに必要な全ての工程が一つにまとまった貴重な地域。漆器を完成させるには、他にも、「木地師」(木をを加工し、椀や盆等を製造する人)、「塗り師」(加工した木に漆を塗る仕事)、また「珪藻土(けいそうど)」(漆に珪藻土の粉を混ぜることで、漆が珪藻土焼成され固くなった細かな孔に入り込み、漆と地の粉の両方で木地をしっかりと守り、漆器を丈夫にする役割があります)が必要とされる等、漆器を生産するために必要な要素は複数あり、そしてどれ一つとして簡単に用意できるものはありません。真庭市には、昭和化学工業(株)岡山工場の珪藻土採石場もあります。

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蒜山珪藻土(けいそうど)の様子
(蒜山ガイドクラブHPより抜粋)

一つの地域で漆器の生産に必要な全てを備えているという点は、この地域の持つ非常にユニークなポイントであり、海外の日本の伝統を体験し触れたい人にとっても大きな魅力となることでしょう。今後の真庭市の海外発信への動きにぜひご注目いただけましたら幸いです。



参考
木地師さんが漆や漆器についてのレクチャーを小学生の子供達にしている様子。小学生はほぼ日常生活では漆器に触れる機会はないと言います。伝統を継承していく上で地道ですがこのような取り組みは意義があると思いますし、子供達も大きくなってもどこかでこの授業を思い出して、地域が誇る伝統を大事にして行って欲しいです。

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木地師さんが木を加工する様子
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採取した後の漆と木地師さん
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「第2回 プロデューサーシップ論講座~プロデュースの理論と実践」開催報告

この度当団体は、2016年12月21日(水)政策研究大学院大学にて、
「研究・イノベーション学会(http://jsrpim.jp/wp)」内の「イノベーション・フロンティア 分科会」とともに「“個人・若者・女性の活躍時代” 第2回プロデューサーシップ論講座」を共同開催いたしました。

プログラムは2つの講演と参加者によるフリーディスカッションという構成です。

一つ目の講演は「総合戦略から実践へ」をテーマにローカルファースト研究所 所長 関 幸子 氏にご講演いただきました。
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関氏は三鷹市役所入庁し図書館、企画、経済課を歴任。退職後は株式会社を立ち上げ、多数の自治体の活性化プロジェクトの企画・運営を行われています。
その官と民両方の立場のご経験から、さまざまなステークホルダーをつなぎプロジェクトを形にしてゆくプロデューサーが、
地方創生において非常に重要で将来性のあるポジションであることを実際の事例をもとに語られました。

2つ目は当団体代表の桜庭大輔が、自身のOxford修士課程のテーマでもある「イノベーションを導く『カタリスト』と『プロデュース理論』について」を講演いたしました。
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現在強く求められているイノベーションは、ある有能な人間・団体だけの努力や才能で現れるのではなく、
彼らとそのプロセスに必要な人材・情報・資金などを解釈し、適切に注ぎ込む「カタリスト」の存在が不可欠で、
それら全体を組み立ててゆくことがプロデューサーシップ®であり、それを発揮できる人物がプロデューサーであるという考えを
体系立てて説明しました。

講演後のフリーディスカッションも活発な議論が行われましたが、講演とディスカッションいずれにおいても共通していたテーマは、
変化・新しいことへのアクションを自ら見つけ、自らが情熱をもって活動することが、イノベーションを成功させる最大の原点になるということであったと思います。
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本講座は、今後3年にわたり2か月に一度偶数月の開催を目途に活動してまいります。
また今回および今後の講演録も電子書籍にて販売の予定です。

どうぞ今後の活動にご期待ください!