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ZESDA's blog

日本の技術と世界のニーズをつなげるプロデューサーの支援・育成を通じて日本企業のグローバル競争力の強化を目指すNPO法人ZESDAのブログです。

プロデューシング・システムを創ることで、日本経済の活性化を目指す、NPO法人ZESDAのブログです。


トルコ財務省 経済参事官より「今年のG20における課題と日本への期待」Platform for International Policy Dialogue (PIPD) 第12回セミナー開催のご報告

 NPO法人ZESDAは、「官民恊働ネットワークCrossover」(中央省庁の若手職員を中心とする異業種間ネットワーク)との共催、(株)自由が丘パブリックリレーションズの協力により、在京の大使館、国際機関や外資系企業の職員、及び市民社会関係者をスピーカーに迎え、国内外の政治・経済・社会問題について英語での議論を通じて理解や問題意識を高める、「Platform for International Policy Dialogue (PIPD)」を開催しています。 

 5月15日(金)朝7時30分より開催した第12回PIPDセミナーでは、ゲストスピーカーに在東京トルコ大使館にて経済担当参事官として活躍されているIzzet Yerdes氏をお招きし、「トルコ経済の現状と今年のG20の課題」をテーマにプレゼンテーションを頂いた上で、参加者の皆様とディスカッションを行いました(注:トルコは本年のG20の議長国です)。

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 Yerdes氏は冒頭、「目覚めのコーヒーになるトピック」として、トルコと日本が深い友好関係を築くきっかけとなった出来事、1890年におこったエルトゥールル号事件を紹介されました。オスマン・トルコ帝国のアブドゥル・ハミトII世が日本に派遣した軍艦エルトゥールル号は、その帰途、和歌山県串本沖で台風のため遭難。500名を超える犠牲者を出す大惨事となってしまった一方、事件の通報を受けた大島村(現串本町)の住民総出の救助活動により、69名の命が助けられた、という事件です。この不幸な出来事は、トルコと日本のその後長く続く深い友好関係の発端となっており、串本町にある慰霊碑では現在でも、町とトルコ大使館共催で慰霊祭が行われているということです。

 人口約7,769万人を中進国トルコは、「若い国」であるとYerdes氏は強調。具体的には、平均年齢は30.7歳、いわゆる生産年齢人口が全体の63.5%を占めており、まさにこれからが「伸び盛り」の国です。また、2050年の人口予測によると、35年後もトルコは労働人口の割合を維持しており、他国に比して若い国であり続けるということです。Yerdes氏は、そんなトルコの「中長期経済ビジョン」は、2023年までに、2兆ドルの名目GDP総額(2014年:約8000億ドル)、一人当たりの国民所得2万5千ドル(2014年は約1万ドル)、そして輸出額5,000億ドル(2013年:約1,500億ドル)を達成し、世界経済のTOP10入りを果たすことを目標として掲げ、これを実現するための目の前の課題として、インフレ抑制、経常収支赤字の削減、そして構造改革の加速による潜在成長率の向上を挙げている、と説明されました。

 Yerdes氏は、「トルコの足元の実質GDP成長率は約4%、これは日本から見ると高い成長率と考えられるかもしれないが、トルコ経済には、より高い成長率が必要。なぜなら、毎年労働市場に参入する約100万人の若者に雇用を提供しなければならないためです」と説明。そして、そのためには、輸出競争力のある幅広い国内産業の育成と、そのための投資促進が必要であり、同時に、そうした民間部門の活動を可能にするために、現在7%を超えているインフレの抑制と現在の安定的な財政運営を維持することが政府・中央銀行に求められている課題であると説明されました。なお、トルコは長年EUへの加盟を国家目標としていることから、EU加盟国に求められるマーストリヒト基準である「政府債務残高の対GDP比60%以下」を2004年以降クリアし続けていること、毎年の財政赤字の水準についても、同基準である対GDP比3%を下回る水準に抑えていることを強調されました。しかし、EU加盟に向けた交渉自体は、トルコ側の努力にもかかわらず、EU加盟交渉は、キプロス問題(南部ギリシャ系住民が多く占めるキプロス共和国と北部トルコ系住民が多くを占める北キプロス・トルコ共和国との分裂問題)により、前進が見られていないとのことです。

 今年トルコはG20の議長国。Yerdes氏は、G20は独自の事務局は持たず、各国が輪番で議長国を務めているものの、前年と翌年に議長を務める国とその年に議長国を務める国の計3か国が共同してアジェンダ設定等の役割を果たす「トロイカ体制」を敷くことにより、ある程度の継続性が保たれていると、説明。そして、昨年の議長国であったオーストラリアから引き継ぎ、来年の議長国である中国にバトンをタッチする立場にある今年の議長国トルコが重視する優先事項を、「3つのI」と表現されました。

 一つ目のIはInclusiveness(包摂的な政策)。各国国内、及び国同士の間で広がる格差や不平等を可能な限り解消することは、社会の安定を維持し、成長を続ける上で最も大切なことの一つであり、そのために、中小企業対策や低所得国への効果的なアプローチを今年のG20の重点課題の一つとしている、と述べられました。そして二番目のIは「Implementation(実施)」。昨年のG20では、議長国オーストラリアの下で、「今後5年間世界のGDP成長率を現状の見通しよりも2%高める」との目標を設定、これを実行するために、各国合計して1,000以上の行動計画が作られました。こうした文脈においてトルコ政府は、この計画を着実に実施する、即ちImplementationを重視しているということです。そして、最後のIが「Investment(投資)」。先進国・新興国双方に存在する膨大なインフラ投資のギャップを埋めていくことが成長率を高めていくうえで不可欠であると述べられ、この観点から、日本が推進している「質の高いインフラ投資」は有効であると説明されました。

 Yerdes氏は、今年のG20は、「3つのI」をキーワードとしつつ、税源移植と利益移転の問題(BEPS:Base Erosion and Profit Sharing)、大きすぎて潰せないシステム上重要な金融機関の資本充実策、米国議会の承認の遅れにより頓挫しているIMFの投票権見直し改革、反汚職対策、そしてエネルギー政策等、多岐にわたる議題が議論されると説明され、プレゼンテーションを締めくくられました。

 プレゼンテーション後の質疑応答では、トルコがどのように財政赤字を削減したかに関する取組み、EU加盟についてのスタンス、「質の高いインフラ投資」の具体例や中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)へのスタンス、若年者に対する雇用創出策、及び「中所得国の罠」に陥ることを避けるための産業政策の在り方等、様々な論点について、活発且つ双方向の意見交換が交わされました。

今後もZESDAはグローバル・ネットワークを構築していくため、「Platform for International Policy Dialogue(PIPD)」を共催して参ります。
引き続き、ZESDAを宜しくお願い致します。