ZESDA's blog

日本の技術と世界のニーズをつなげるプロデューサーの支援・育成を通じて日本企業のグローバル競争力の強化を目指すNPO法人ZESDAのブログです。

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日欧産業協力センター 防衛産業専門研究員 Jerome Camier氏より「日本は本当に武器輸出国になれるのか?」Platform for International Policy Dialogue (PIPD) 第18回セミナー開催のご報告

 NPO法人ZESDAは、「官民恊働ネットワークCrossover」(中央省庁の若手職員を中心とする異業種間ネットワーク)との共催、(株)自由が丘パブリックリレーションズの協力により、在京の大使館、国際機関や外資系企業の職員、及び市民社会関係者をスピーカーに迎え、国内外の政治・経済・社会問題について英語での議論を通じて理解や問題意識を高める、「Platform for International Policy Dialogue (PIPD)」を開催しています。

 2015年11月25日(水)夜8時00分より開催した第18回PIPDセミナーでは、日欧産業協力センター(EU-Japan Centre for Industrial Cooperation)のセミナー・ルームをお借りして、同センターにて、防衛産業研究員として活躍されているJerome Camier氏をゲストスピーカーとしてお招きし、「Will Japan become an arms exporter? (日本は武器輸出国となるのか?)」をテーマにプレゼンテーションをして頂いた上で、参加者の皆様とインタラクティブなディスカッションを行いました。

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 自己紹介に続くプレゼンテーションでは、まず、日本の防衛作業や輸出対象品目の概要について写真を交えて紹介をしたうえで、日本が防衛装備品を輸出することの必要性、そしてそれを実現するうえでの課題が提示されました。

 多くの人にとって馴染みの薄い「武器」「防衛装備品」ですが、実は、きわめて多くの、そして家電等で一般消費者にとってなじみの深い企業が関わっていることが示されました。この中で、日本が国際競争力を持つ分野は武器に搭載されるソフト・ウェアであること、最近話題に上る代表的な輸出対象品として、海上での離着陸が可能な海難救助艇US2、オーストラリアへの輸出で話題のそうりゅう型潜水艦、そして機雷探知・無力化機能を持つPI哨戒機等が挙げられました。

 その上で、日本にとって武器輸出が必要となる理由を、防衛基盤を巡るトリレンマ(3つの課題を同時には達成できず、どれか一つは諦めなければならないこと)を描いた三角形で、分かりやすく説明頂きました。即ち、①日本を取り巻く安全保障環境の困難化に対応できる防衛基盤の強化(=Capacity)、②防衛基盤の強化を他国に依存しすぎることなく自力で実現する力の保持(Sovereignty)、③財政赤字が拡大する中で、コストを抑制する必要性、という日本にとって避けることのできない3つの課題は同時に解決困難であるが、武器輸出を促進することにより、この緩和につながるということです。

 例えば、武器輸出は1. 諸外国との共同研究開発を促進することで、低負担で、より効果的な防衛基盤の強化につながる、また、2. 大量生産が可能となることから生産に伴う固定費の削減につながる、といったことが具体的な理由として示されました。また、本年合意された改訂版日米防衛協力の指針における内容を実施に移す必要性や、一部のASEAN諸国の防衛基盤強化に日本として貢献することの必要性等も、副次的な理由として挙げられました。

 他方で、武器輸出を促進する上での留意点として、日本が持つ中核的技術が、直接の輸出先国以外の第三国に流出する懸念があること、及び国内の世論の反発を受けて、企業が投資・生産にしり込みし得ることが指摘されました。

 こうした背景から、現政権は、いわゆる武器輸出三原則を見直したものの、これを実現するうえでは、多くの課題があると、Camier氏は指摘されました。例えば、防衛装備品調達に当たっての、コスト+方式により、民間企業にとってコスト削減の意識が働きにくい構造にあり、結果として割高になりやすいこと、日本の製品は実戦を通じた効果の検証ができないこと、日本の防衛関連産業が多数の企業がひしめく構造をとっていること、他方で、競争原理が働きにくい環境におかれていること、そしてNATO等の多国間軍事同盟に参加していないことから、防衛装備品の規格を他国と併せにくいこと、等が挙げられました。Camier氏は、これらの課題に政府は取り組んでいるものの、その解決には時間を要すると指摘され、プレゼンテーションを締めくくりました。

 今回は、大半の参加者にとってなじみの薄い、専門的知識が求められるテーマでしたが、Camier氏による分かりやすく、具体的な説明のおかげで、プレゼンテーションの途中及び終了後にも、参加者から、「日本政府の新たな武器輸出に関する方針は、武器を輸入しようという諸外国の視点から見て、安定的なサプライヤーとしての信頼を勝ち得るものなのか?」、「日本企業が防衛産業に関与し続けるインセンティブとは何か?」、「そもそも「武器」の定義とは何か?」等、多くの質問やコメントが寄せられました。

 今後もZESDAはグローバル・ネットワークを構築していくため、「Platform for International Policy Dialogue(PIPD)」を共催して参ります。引き続き、ZESDAを宜しくお願い致します。