ZESDA's blog

日本の技術と世界のニーズをつなげるプロデューサーの支援・育成を通じて日本企業のグローバル競争力の強化を目指すNPO法人ZESDAのブログです。

プロデューシング・システムを創ることで、日本経済の活性化を目指す、NPO法人ZESDAのブログです。


米国大使館 財務官より 「米国大統領選挙の見通し」  Platform for International Policy Dialogue (PIPD) 第21回セミナー開催のご報告

NPO法人ZESDAは、「官民恊働ネットワークCrossover」(中央省庁の若手職員を中心とする異業種間ネットワーク)との共催、(株)クリックネット まなび創生ラボ(株)自由が丘パブリックリレーションズの協力により、在京の大使館、国際機関や外資系企業の職員、及び市民社会関係者をスピーカーに迎え、国内外の政治・経済・社会問題について英語での議論を通じて理解や問題意識を高める、「Platform for International Policy Dialogue (PIPD)」を開催しています。


2月17日(水)の朝7:30から9:00の時間帯で行われた第21回PIPDセミナーは、在東京米国大使館にて財務官として活躍されているMr. Christopher Winshipをゲスト・スピーカーとしてお招きし、「Prospect of the U.S. presidential election(米国大統領選挙の見通し)」をテーマにプレゼンテーションをして頂いた上で、参加者の皆様とインタラクティブなディスカッションを行いました。

(*今回のお話は、Winship氏の個人的な見解であり、米国財務省や政府とは一切関係ありません。)

f:id:ZESDA:20160317120942j:plain

Winship氏は、前職で米国財務省の東アジア(日本・中国)担当課長を務められていたほか、マンスフィールド研修生として日本の金融庁日本銀行参議院議員事務所で勤務されたこともある日本通です。研修生時代、Crossoverの池田代表と机を並べて一緒に昼夜問わず働いた仲だそうです。

なぜ、財務官のWinship氏がテーマとして「大統領選」を選んだのか?それは、Winship氏が選挙結果の鍵を握るswing state(共和党・民主党の間でswing(揺れ動く)する州)の一つであり、毎回の大統領選挙の本格的な幕開けとなる最初の候補者指名が行われるアイオワ州出身だからです。今回の大統領選挙についても、つい先日(2月1日)にアイオワ州で民主・共和両党の党員集会が行われたばかりです。

アイオワにいれば嫌でも選挙に詳しくなります。」という一言からプレゼンテーションは始まりました。

アイオワ州の人口は僅か300万人であるものの、Swing-stateであるが故に、常に大勢の民主・共産の候補者たちが駆けつけ、町中で様々なキャンペーンを繰り広げます。選挙期間中に街のカフェやスーパー、体育館に行けば必ず候補者の一人に出会うそうです。そんな環境で育ったWinship氏は、大統領選挙の仕組みはアメリカ人でも複雑すぎてよく理解していない人が多いと添えながら、そのポイントを分かりやすく説明して下さいました。


ポイント1:米国大統領選では多数の有権者の支持を集めた者が勝つとは限らない!

過去に4回、対立候補を上回る得票数を獲得した候補者が、選挙には負けるという事例がありました。これは米国大統領選挙制度が、各州に割り振られた総数538名の選挙人団( Electoral College)からの得票をめぐる争いであること、そして、各州で過半数の選挙人の得票を得た候補者が、その州に割り振られた全ての選挙人の票を獲得できる「Winner Takes ALL(勝者総取り)」方式を採用しているためです。

例えば、記憶に新しい2000年の選挙では、一般得票数で上回ったAl Gore候補がGeorge W. Bush候補に破れましたが、これは、Bush候補が多数の選挙人(27名)を有するフロリダ州等において僅差でAl Gore候補を破り、Algore候補に投じた選挙人の票も含めて「総取り」できたことによります。

なお、選挙人数は、各州の人口に応じて割り振られ、各州選出の上院議員(2名)と下院議員数を合わせた数と同数になります(例:カリフォルニア州:55、ネバダ州:3)。論争的な「Winner Takes All方式」をめぐっては、過去何度も「単純多数決方式」に見直すべきとの議論がされてきたものの、「人口が相対的に少ない州の声を大統領選に反映させることが必要」との意見に押され、現在まで改革は実行されていないそうです。


ポイント2:米国大統領選は予備選挙(primary election)と本選挙(general election)の二段階方式!

米国大統領選挙は、党の候補を選ぶ「予備選挙(primary election)」と、大統領を選ぶ「本選挙(general election)」に分かれます。

予備選挙については、州によって「党員集会(Caucus)」と「予備選(Primary)」の二種類の異なる方法が採用されており、アイオワ州は党員集会で党の候補が選ばれます。そして驚くべきことに「党員集会」は無記名投票ではありません。具体的には、会場となる公民館や体育館に集まった有権者が、支持する候補者ごとのグループに分かれ、それぞれが他の候補の支持者たちを自分の支持候補のグループに引き込むための“説得合戦”を展開します。

予め定められた説得ための時間が終了したのち、政党職員が各グループの人数を数え、人数が参加者総数の一定割合に満たないグループは無効と見なされ、別のグループに鞍替えすることを求められます。その後、再び支持グループごとの人数がカウントされ、その数に比例する得票数がそれぞれの候補に割り当てられます。このような方式をとるため、「党員集会」は一日がかりとなるそうです。


ポイント3:Blue state とRed state

次に、Winship氏は赤と青で塗られたアメリカ地図を示しました。Blue Statesは予備選挙民主党が勝つ(勝ちやすい)州 とRed Statesは共和党が勝つ(勝ちやすい)州です。その中に、今回話題の色が付いていない”Swing States”がいくつかありました。それらは、赤と青を混ぜ合わせた”purple states”と呼ばれることもあるそうです。ここで会場から、「Swing stateに共通の特徴はあるのか?」という質問がありました。

Winship氏は、人種、宗教、及び所得の面で多様性が高い州、若年層が多い州、農業工業両方が盛んな州、等、様々な要素を挙げられました。また、Winship氏出身のアイオア州は、高齢者人口が多いが民主・共和の支持者の数が丁度半分になる州なのだとお話してくれました。なお、この色分けは常に一定なわけではなく変化をすることもあります。例えば、かつてウエスト・バージニア州は民主党候補者支持層の炭鉱労働者が勢力を持つBlue Stateでしたが、労働組合の力の低下に伴い共和党支持のred stateに変わったそうです。

民主党候補も共和党候補も確実に勝てる州よりも、揺れ動く、Swing Statesでの勝利を得るべく、フロリダ州アリゾナ州ヴァージニア州等に重点的に選挙リソースをつぎ込むことになります。例えば、2012年の選挙で、ほとんどのSwing Statesで勝利したオバマ氏が大統領になりました。


ポイント4: 2016年の大統領選の予算

続いてWinship氏は選挙資金がいかに膨大かということを提示されました。なんと、2012年の選挙戦では、総額26億ドルもの資金が使われたそうです。候補者ごとの資金が外部資金と候補者委員会からの資金に分けられ提示された図をみると、候補者別の産業界からの外部献金や、党から支援の割合が明確にわかります。

民主党の候補者指名争いをしているヒラリー・クリントン氏とバーニー・サンダーズ氏を見比べると、サンダーズ氏は圧倒的に外部献金が少ないことが分かります。オバマ大統領のファンド・レイジングも同様の傾向が見られたそうです。
資金の使い道は、ケータリングの発注からホッチキスの芯に至るまで、FEC(Federal Election Commission)により厳しく監視されているそうです。


ポイント5: 最後まで結果が見えない選挙戦

最後に、民主党・共和党それぞれの候補者の支持率の推移のグラフを見比べました。

予備選挙は7月の全国党大会に先立つ2月から6月まで、そして、本選挙は11月に行われ、新大統領就任は2017年1月になります。Winship氏は、長い選挙戦では、途中で脱落した候補者が二番目を走る候補者を支持する旨を表明することで一位と二位の順位が入れ替わり得ること、一時的に人気があっても、長丁場の大統領選を走りきるために必要な資金を枯渇させたり、公約と過去に支持した政策の矛盾を突かれて支持率を急落させる候補者もいることから、最後まで結果が分からないことが多い、と説明され、分かりやすく丁寧なプレゼンテーションを終えられました。
日々変化し続ける支持率に目が離せません!



参加者からは、予備選挙では、各候補者は党の中での支持を得るために具体的で過激な政策をアピールするが、本選挙では全国民からの支持を得なければならないため、スタンスがぶれるのではないか?なぜブッシュ・ファミリーは嫌われているのか?銃規制をめぐる候補者のスタンスはどうか?副大統領候補が選挙結果に与える影響はどの程度か等、様々な角度からの質問が飛び出しました。

すべての質問に丁寧に答えるWinship氏の大きく暖かなお人柄にとても感動しました。参加者からは、11月の本選挙前に再度Winship氏に再度登壇頂きたいとのリクエストを多く頂きました。


最後に、会場にご協力頂いた株式会社クリックネット まなび創成ラボ様に、この場を借りて御礼申し上げます。

今後もZESDAはグローバル・ネットワークを構築していくため、「Platform for International Policy Dialogue(PIPD)」を共催して参ります。引き続き、ZESDAを宜しくお願い致します。