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ZESDA's blog

日本の技術と世界のニーズをつなげるプロデューサーの支援・育成を通じて日本企業のグローバル競争力の強化を目指すNPO法人ZESDAのブログです。

プロデューシング・システムを創ることで、日本経済の活性化を目指す、NPO法人ZESDAのブログです。


在日本留学生協議会(CISA)留学生代表 Royce Lee氏より 「日本経済・社会における外国人の役割」  Platform for International Policy Dialogue (PIPD) 第23回セミナー開催のご報告

NPO法人ZESDAは、「官民恊働ネットワークCrossover」(中央省庁の若手職員を中心とする異業種間ネットワーク)との共催、(株)クリックネット まなび創生ラボ(株)自由が丘パブリックリレーションズの協力により、在京の大使館、国際機関や外資系企業の職員、及び市民社会関係者をスピーカーに迎え、国内外の政治・経済・社会問題について英語での議論を通じて理解や問題意識を高める、「Platform for International Policy Dialogue (PIPD)」を開催しています。


3月23日(水)の朝7:30から9:00の時間帯で行われた第23回PIPDセミナーは、シンガポール出身の一般社団法人 在日本留学生協議会(CISA)留学生代表、この春に東京大学を卒業しシンガポール人としては初めて三菱商事に新卒で就職予定のRoyce Lee氏をお招きして、「日本経済・社会における外国人の役割」についてお話いただいたあと、参加者の皆様とインタラクティブなディスカッションを行いました。

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冒頭Lee氏は、参加者に対し「隣の人に声をかけて握手をし、自己紹介をして欲しい」と呼びかけました。そして、和やかな雰囲気に包まれた会場に対して、今回のテーマを考えるに当たり、外国人と日本人がwin-winのパートナーシップをつくることが重要である、と強調した上で、カギとなる問いとして以下の二つを提起しました。

・What can foreigners do for Japan?(外国人は日本のために何ができるのか?)
・What can Japan do for foreigners?(日本は外国人のために何ができるのか?)

プレゼンテーションはLee氏の自己紹介で始まりました。シンガポールで生まれ、東京大学経営学を学び、この春から日本で就職するLee氏は、日本留学生コミュニティが主催するイベントの幹事や、シンガポール留学生会の議長として活躍してきました。ここで参加者から出された「何故敢えて日本で就職しようと考えたのか?」との質問に対して、Lee氏は「4年間の日本滞在を通じてすっかりこの国に惚れ込んでしまった。何より、自分の学費は日本政府の奨学金で賄われており、日本の納税者の皆さんから頂いた投資にお返しをしたいと思っているから」と応えられました。その上で、「日本経済・社会における外国人の役割」というテーマについて、以下の5つの面から掘り下げていきました。

1. Foreigners Living in Japan: Stories and Statistics

「外国人」とひとことで言っても、留学生、観光客、そして企業に勤める外国人など、様々な立場の方がいるなか、Lee氏は、外国人の具体的イメージを共有するため、ケニア、ベトナム、インド出身で日本に在住しているご自身の友人を紹介されました。一人ひとりの背景にある多種多様なストーリーに触れることを通じ、「外国人」と一括りに考えることはできないことが、改めて実感されました。

個々人の事例紹介に続いて、法務省の統計に基づき、日本に暮らす外国人が増加傾向にあり、中国人が最多であることが示されました。Lee氏は、本統計の対象となる「外国人」に含まれている「特別永住者在日韓国人朝鮮人)」について、日本で生まれ、日本育ちにもかかわらず、外国人と見なされていることを指摘されました。また、OECDのデータにより、OECD諸国において外国人比率が最も高い国はスイス(23.3%)であり、日本の1.6%は国際的に見ても低水準であることが明らかになりました。その上で、日本に暮らす外国人のうち日本で働いている人は787,000人、うちフルタイムの労働ビザ保有者(いわゆるホワイトカラー)は18.7%を、パートタイムの労働ビザ保有者(アルバイト等)も18.7%であることがJETROの統計に基づき共有されました。Lee氏は外国人が日本経済にさらに貢献するために、フルタイムの労働ビザ発行を増やす政策が必要ではないか、と指摘されました。

ここでLee氏は、「出身国の経済発展の度合い」を示す横軸と、「個々人の教育・スキルのレベル」を示した縦軸の二つに区切られる4つのマトリックス(箱)を描き、日本で働く、あるいは働きたいと考えている外国人のカテゴリー分けを試みました。これによると、右下の箱(教育・スキルレベルの低い先進国出身者)に該当する人は殆ど想定できず、左下の箱(教育・スキルレベルの低い途上国出身者)は実習生や単純労働に従事している外国人が、右上の箱(教育・スキルレベルの高い先進国出身者)には、金融・法務・企業経営に従事している外国人が該当することになります。そしてLee氏は日本が今後注目すべきは、左上の箱(教育・スキルレベルの高い途上国出身者)であると強調されました。

2. History of Foreigners in Japan: The Meiji Era

次に、Lee氏は歴史的側面から日本と外国人との関係の変遷を考察しました。明治の文明開化の時代、日本人にとって外国人とは“教えを請い、追いつき、追い越すべきお雇いの白人さん”でした。その後国力を高めた日本は、西欧列強同様、帝国主義に基づき韓国・台湾を植民地とし、累次の戦争で広範な地域を占領していきます。

この時代、日本人にとって外国人とは、“教え、育てるべきアジア人”でした。しかし、敗戦後、日本人の外国人観は再び“追いつき、追い越すべき西洋人”へと戻り、「Japan as No.1」と呼ばれた80年代で頂点を迎えます。

そして、バブル崩壊後の日本は長期不況や方向感喪失の中で、カルロス・ゴーン氏やハワード・ストリンガー氏の社長就任に代表されるように、最重要の役職に外国人を登用するようになり、再び、明治時代の「お雇い外国人観」が復活しているのではないか、との考察を共有されました。

3. The Current Debate on Immigration: The Solution to Social and Economic Issues?

Lee氏は、日本の移民問題を考えるにあたり、アジアの人々はアジアのリーダーとして日本を好んでいる、との認識を持つべきであり、日本企業は外国人をより雇用することで、アジア諸国とのビジネス・パートナーとしての地位を今以上に確立できると指摘します。また、外国人を技能実習生として地方に派遣する制度は、地域活性化に貢献できるとも主張されました。同時に、移民受入をあまりに急激に進めれば、外国人が日本社会にうまく統合されず、犯罪増加や、日本人のアイデンティティが希薄化することへの懸念が高まるといったリスクがあることも指摘されました。

4. Integration into Japanese Society: The Challenges that Immigrants Face

Lee氏は、調和を重んじる日本社会において、外国人が直面する「出る杭は打たれる」経験や外国人差別は、外国人が日本社会や企業にうまく溶け込んでいく上での障害となっていることを指摘。差別を助長するヘイトスピーチに対する規制導入も含め、外国人・日本人双方がお互いの立場を理解しあうために率直に話し合うことが大切であると指摘されました。

5. Efforts in Support of Integration: Towards a More Inclusive Society

最後にLee氏は、日本人が外国人とのwin-win な関係を構築するために最も重要なポイントとして日本語を指摘されました。例えば、人手不足で悩む日本のサービス産業による留学生のアルバイトとしての採用は、彼らに日本語コミュニケーション能力向上の機会を与えています。こうした関係性は、留学生とビジネス双方にとってよいwin-win situationであると指摘されました。そして、外国人も含め、多様な才能を持つ人々が受け入れられ、活躍できる社会をつくっていこう、と参加者に呼びかけながら、プレゼンテーションを締め括りました。

その後、質疑応答に向けたwarming upとして、Lee氏の呼びかけにより、参加者が2-3人でペアを作り、「日本人のアイデンティティとは何か?」との問いかけに10分間英語で議論する時間を持ちました。議論の後の質疑応答では、Lee氏への質問だけでなく、参加者同士の議論の内容の共有も次々と行われ、とてもインタラクティブで活気あるコミュニケーションの時間となりました。

「日本人のアイデンティティ」をめぐる議論ついては、日本のパスポート、母語としての日本語、日本食を恋しく思う気持ち、自然に出てしまうお辞儀等の習慣、あるいは物事の白/黒を明確に二分しない発想法等、日本人を日本人として規定している多様な要因がシェアされました。一方で、日本にいると自分たちが日本人だと認識する機会が少ないという意見も寄せられました。また、参加されたロシア人女性は、日本人のアイデンティティは日本人の両親から生まれたという事実、すなわち「血統」にあると指摘、その点が、母国ロシアを含め他の国と大きく違うのではないかとの発表があり、参加者に大きな気付きを与えていました。

また、Lee氏に対する質問として、外国人をさらに活用するためには日本が変えるべき事柄、文化のバリアの所在、Lee氏のシンガポールのご両親の日本で就職することへの反応、2020年のオリンピックとその後に向けて日本が成すべきこと、そしてテロの脅威と日本の安全性確保について等、様々な議論が交わされました。

Lee氏は、4月から社会人になっても、時間が許す限りPIPDに参加いただけるということで、今後またお目にかかれることを、スタッフ一同、とても楽しみにしています。そして、最後に、会場にご協力頂いた株式会社クリックネット まなび創成ラボ様に、この場を借りて御礼申し上げます。


今後もZESDAはグローバル・ネットワークを構築していくため、「Platform for International Policy Dialogue(PIPD)」を共催して参ります。引き続き、ZESDAを宜しくお願い致します。