ZESDA's blog

日本の技術と世界のニーズをつなげるプロデューサーの支援・育成を通じて日本企業のグローバル競争力の強化を目指すNPO法人ZESDAのブログです。

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「鶴岡イノベーションヴィレッジ訪問ツアー」 

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2018年12月14~15日、我々NPO法人ZESDAは、研究・イノベーション学会プロデュース研究分科会と共に「鶴岡イノベーションヴィレッジ訪問ツアー」を開催いたしました。

今回の記事は、事務局スタッフの永渕が担当させていただきます。今回のツアーにはコンサルタントや大学教員やURA、ビジネスマンなど社会人を中心に約30人が参加ししました。私は参加者の中で最年少(大学2年生)でもあり、初めは非常に緊張していたのですが、未熟な学生の私にも非常に実りある濃密な体験ができたツアーとなりましたので、その概要を紹介させていただこうと思います。

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▲講演する冨田勝教授・慶應義塾大学先端生命科学研究所長

参加者の到着後すぐに、慶應義塾大学先端生命科学研究所の所長である冨田勝教授による講演が行われました。昨今、同研究所は「イノベーションの揺りかご」とも呼ばれており、研究・教育の枠組みを越え、大学をハブとし、世界を見据えた地方創生を展開しています。設立時から現在まで所長として務められている冨田教授の講演は非常に刺激的でした。

まず、先生は、「地方をいかに活性化させるのか」という、問いの立て方自体に東京からの上から目線があると指摘し、東京至上主義的な意識の改革が必要だと訴えます。そうした意識を「地方の方が東京よりも優れている」というマインドにまで変えていかなければ、地方創生はそもそもはじまらない。「東京から離れた鶴岡にわざわざやってきてまで何かをなそうと思うような人にこそ、イノベーションを生み出す可能性が秘められている」という教授からの言葉には、東京都心に閉じこもった生活を送っていると気づきにくい地方創生への大きなヒントが隠されているように感じました。

その後も、「花よりも、根を養え」という鶴岡の伝統的な教えに基づいた中長期的な視座に立った教育。「教科書的人材」を生み出す我が国の教育に対して一石を投じていく冨田流アプローチ。さらには「学ぶ」という行為の本質は一体なのかということについて、などなど、幅広くお話していただきました。

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▲研究所の誇る分析機器の機能を解説する冨田教授

冨田教授の講演の後は、ツアー参加者の皆様とともに施設の見学をしました。教授の案内のもと、世界最新鋭のメタボローム測定器が50台ほど整備されている、メタボローム研究ラボを見て回りました。わずか30分ほどで細胞内にある数百種類の代謝物を一斉解析できる世界でも指折りの性能をもっているとのこと。50台が目の前にずらりと並んでいる様はまさに圧巻でした。

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▲メタボローム研究ラボ

施設の見学後は、同研究所出身で、世界で初めて人工クモ糸繊維の量産化技術を確立したことで知られるspiber代表の関山和秀氏と、人の便から腸内細菌の遺伝子情報を分析するメタジェンのCOOの村上慎之介氏からご講演をいただきました。

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▲spiber関山氏

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▲メタジェン村上氏

関山氏からは、クモの糸の原材料であるタンパク質という素材それ自体が持つイノベーションの可能性、そして世界でもトップクラスの業績を誇るspiderの企業としての今後の展望などを、また、村上氏からは、腸内フローラ、すなわち腸内環境の多様性に注目し、個人個人に層別化された食品摂取をいかに社会実装するかのビジョンについてお話しいただきました。質疑応答では、お二人に向けて専門的かつ積極的な質問が飛び交い、会場は熱気に包まれました。

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▲懇親会の模様

そして、夜の懇親会でも熱気は冷めやらず、研究所併設の宿泊所「スイデンテラス」にて美味しい料理や地元のお酒をいただきながら、冨田教授と参加者の間で議論・情報交換が夜中まで活発に行われました。

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▲「スイデンテラス」の外観

ちなみに、今回私たちが宿泊したホテル「スイデンテラス」は、建築界のノーベル賞とも言われるプリツカー賞を受賞した建築家・坂茂氏の設計によるものでした。水田の真ん中に浮かぶような外観が特徴的です。また、宿泊客がくつろぐことができるように部屋やロビーは広々とした空間設計がなされており、リラックスした状態で参加者同士、議論・コミュニケーションをすることができました。私自身も、知見などほとんど持ち合わせていない学生の身分ですが、社会で既に活躍されている皆様からジャンルを超えた様々な話を聞くことができ、多くのことを学ばせていただける機会となりました。

特に、講演で冨田教授からうかがった「鶴岡という東京から距離の離れた場所に積極的に訪れる気概のある人こそが、イノベーションを起こす」「東京の中から飛び出さずに内側に閉じこもっている人々からは、カネ・コネ・チエの循環は生まれない。」これらの言葉はずしりと胸に響きました。もしも、地方を、観光旅行などで消費する対象としてしか理解できていないならば、私たちの精神は、知らず知らずのうちに、東京に引きこもってしまっているということなのかもしれないと思いました。

また、ZESDAが研究する産業の「プロデュース(「カネ」「コネ」「チエ」をイノベーターにバランスよく注ぐことを通じて、価値が増大していくエコシステムを創造すること)」に引き付けてこの鶴岡の研究所の挑戦を解釈するならば、まず冨田教授が中心となって最高の分析器を中心とした「チエ」をドライブさせることで「カネ」と「コネ」を世界中から集めている。そして、さらに海外から優秀な研究者たちを集め、革新的なアイデアが生み出される現場を活性化させ、そこからベンチャー企業などイノベーションを連鎖的に巻き起こす。ということなのかなと思われました。

さらに、冨田教授は志ある学生たちを積極的に援助することで、新規価値創出を促し、その結果、海外からも高い志を持った一流の学生たちが研究室に集まり、さらなるイノベーションが生まれる構造を作り上げているのです。

鶴岡イノベーションヴィレッジは、「チエ」のドライブによって新規産業を創出し、工場を建てることで鶴岡に新たな雇用を生み出すという最高のグローカリゼーションの実例であり、若い挑戦者に惜しみなく「カネ」・「コネ」・「チエ」を注いで価値創出を助ける冨田教授はまさしく「プロデューサーシップ®」の体現者であると思われました。

それから、今回のツアーを通じて、時間を自分のためにのみ使うのではなく、世の中を少しでもよくするために使おうとする人々が集まりはじめて、革新的な発見や活動が行われるのだな、と強く感じました。誰もが、自分のためだけではなく、新たな価値を生み出すための議論を行おうと熱意を持ち、そうした人たちが「覚悟」をもって集まることでイノベーションが生まれる。今回のツアーでは、その循環を上手く回すために必要な要素を発見できたように思います。「イノベーションの揺りかご」を深く体感させていただきました。

最後に、あらためて、今回のイベントを主催してくださった冨田教授、そして鶴岡バイオサイエンスパークの皆様、貴重な機会を提供していただき、誠に感謝申し上げます。

これからも、NPO法人ZESDAは、さまざまなイベント・活動を行ってまいります。さらに、今後また、このようなツアーが企画される予定ですので、その際はまた多くの方々にご参加いただければなと思っております。

今後も益々のご支援・ご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。