ZESDA's blog

日本の技術と世界のニーズをつなげるプロデューサーの支援・育成を通じて日本企業のグローバル競争力の強化を目指すNPO法人ZESDAのブログです。

プロデューシング・システムを創ることで、日本経済の活性化を目指す、NPO法人ZESDAのブログです。


プロデューサーシップとは何か? 如何にすれば、それを知ることができるのか?(プロデューサーシップ・シンポジウム報告)

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去る5月27日(土) 〈研究・イノベーション学会、映像メディア学会 合同シンポジウム(ZESD共催)〉『プロデューサーシップ、ローカルコンテンツと地方創生』が開催されました。

冒頭、数名の方の基調講演の後、前半は、主にプロデュース理論を中心として、また、後半では実際に事業を展開されている方々による具体例を交えた起業および事業の実践論などがシンポジウム形式で討議され、来場者とも活発な議論が交わされました。

論じられたテーマや実際のプロデュース体験談など、非常に多岐に渡るため、ここでは、その個々の細かい部分について報告は割愛されていただき、一聴講者として全体の感想などを述べさせていただきます。

本シンポジウムのタイトルは『プロデューサーシップ、ローカルコンテンツと地方創生』というテーマです。ここで一つ、気づく点として、なぜ敢えてローカルコンテンツなのか?という点と、なぜ、今、地方創生なのか?という点です。

本シンポジウムのタイトルに沿った形で、桐山登士樹氏の「デザインによる富山県プロデュース」や、「熊本の味を世界に発信」というテーマで発表された重光悦枝氏、中東に日本の食文化と伝統工芸を組み合わるという合わせ技で「日本文化」を売り込むことに成功した石田和靖氏などをはじめとした、様々な事例が紹介されました。また、登壇されたそれぞれの方々の豊富なプロデューサー経験に基づいた「プロデュースとは、そもそも何か」というテーマで活発な討議がなされました。

また、プロデュースそれ自体に関する様々な論点について、以下のような発表をいただきました。

菱沼宏之氏からは、プロジェクトの旗振り役としてのプロデューサーの役割の重要性についてのご説明をいただきました。
原島博氏からは、ご自身の長年の豊富な経験から、プロデューサーとして立つ3つの条件として⑴人的ネットワーク力、⑵未来へのビジョンが描けること、そして⑶人徳の重要性が挙げられました。
島田一雄氏からは、学生を対象とした「衛星設計コンテスト」の企画運営を通じた25年にわたる理系人材教育の実践を通じ、プロデュース活動における夢とロマンの重要性について述べられました。
また、中原新太郎氏からは、日本的組織風土が如何にプロデュース活動の疎外的状況を作り出しているのか、それを打破するための提言などが述べられました。
当団体(ZESDA)の桜庭代表からは、プロデュースにおけるカタリスト(触媒)となる人材の機能について理論的に整理したプレゼンを行い、それについてもパネリストとの活発な討議がなされました。


改めて本ブログ筆者なりに、そもそもなぜ今、「プロデュースの意味」についてこれほどまでに関心が持たれるのか、ということについて以下のように考えてみました。

(1)会社・役所などの組織の中でただ与えられたことを受身的にこなすのではなく、もっとそこで働く個人が主体的かつ前向きにものごとに働きかけて、社会にとって必要とされるような存在となってゆくという姿勢が求められている、ということ。

(2)いままでのように組織に埋没した形で、あるいは、ただ世の流れの中で、惰性的に社会生活、仕事、あるいは市民生活を続けていって良いのか、という疑問と、漠然とした不安の存在。

(3)そのような時代状況になかで、もっと深く何かを主体的に創造すること、その重要なキーワードとして、プロデュースという言葉と、果たしてそれは本当のところ一体何なのか、という答えを探りあてたい、という欲求の高まり。

以上のような理由からではないでしょうか。

今回のシンポジウムでは、長年プロデュースの第一線で活躍されてきた方々のプロデュースとは何か、ということについての経験的実感について鋭い切り口で述べられていたことが印象的でした。

これらのお話をお聴きした中で、本ブログ筆者が気づいた大まかな点としては、以下です。

(1)プロデュースの成功には、プロジェクトを取り巻く様々な条件、例えば、時代状況や、それを実現する上での人材を得ているのかどうかや、何よりもベストのタイミングでそれを行っているのか、などのプロデューサーの実力もさることながら天運などの要素も大きいということ。

(2)ことを為すことにより、結果的に後から振り返ってみた時に、自分がプロデューサーであったことに遅れて気づく、といういこと。つまり或ることを目標にプロデュースをやろう、という目的論ありきでプロデューサーになるのではなく、やってきたことを後から振り返ってみると当該の仕事が恐らくプロデュースといえるものであったことがかなりある、ということ。(丸山茂雄氏のプレゼンより)

(3)プロデュースという行為、あるいはプロデューサーになること、について理論化することはできない。プロデュース行為のあまりにも多くの事柄が、言語化できない暗黙知次元の要素によって構成されており、人は現場での実践を経験することでしかプロデュースの本質を理解できないし、そもそもプロデューサーになることもできない。

主には、以上の3点であろうかと思いました。

大谷由里子氏は、プロデューサーとなること、プロデュースすることとは、生死をかけた次元からくる心の底から湧き上がる熱い情熱と自己の本心にそこはかとなくある核としての欲望を再確認し自覚することが何をおいても第一である、と述べられました。ある種の限界状況に身を置くことをイメージでもって想起して、臨場感の中で真剣に考える、ということが必要であると。その一つの方法として、大谷氏が主催されている志縁塾(次世代のためのプロデューサー養成のための私塾)の授業の一環で、戦跡などを訪れ、そのようなものが感じられる歴史上の生々しい素材に敢えて直接向き合うことで学びを得ている、とのことでした。

そして何よりも、明確な答えを得ることがなかなか困難な対象である「プロデュースとは何か」というテーマについて問い続けることと、ただ考えるだけではなく具体的実践の場面で、自分の可能性と制限性の範囲内ではありますがプロデュースに一歩足を踏み出すこと、試行錯誤を前向きに捉えて挫けることなく積極的に小さなプロデュース経験を積んでいくことが何よりも重要である、ということへの気付きを得ました。まだまだ不確かではありますが、それの地道な積み重ねにより、いずれ大きな機会が訪れた時の成功の肥やしとなると思われました。

恐らく、このような会に参加することにより目には見えない形ではありますが、プロデュースについて少しずつイメージを形成していくことは、今後の大きな収穫得ることが出来るためのキッカケとなります。

そのような意味で、本シンポジウムに参加した意義は大いににあったと思います。また、機会ある毎に、つとめて参加する意義は十分にあると思いました。

春蘭の里訪問(5/13〜14)

2月の前回の訪問から、2か月半を経て、春蘭の里にZESDAが今一度多田様のもとに提案を携えて伺いました。
いくつか新たに得たもの、感じたもの、共有できたことがございましたのでその様子をレポート致します。


【1日目】

穴水駅到着後春蘭の里へ
飛行機組、電車組(夜行バス経由)に分かれ、春蘭の里についたのはお昼頃。
今回は、海辺にほど近く、過ぎし日の原風景が残る古民家、民宿「海の家」にて、ZESDA一同お世話になりました。
多田様の手厚い歓迎を受け、まずはこの春蘭の里のありのままの姿をZESDA新メンバーに体験させていただきました。

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・お食事に舌鼓
続きまして紹介させて頂くのは、春蘭の里でだけ食べられる様々な美味しい食べ物です!!

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上の画像は「マルガージェラート」さんのアイスで、イタリアジェラート世界大会で入賞もした絶品です!
下の画像は米粉で作られたパンで、生地がふわふわのもちもちで1個ならぺろりと食べれてしまいます・・・!
皆さんも春欄の里に訪れた際には是非ご賞味あれ!
そしてそして・・・春蘭の里では体に優しい海鮮・山菜料理が楽しめます。これが本当にお酒が進むんです!!

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こちらは実際に頂いた料理なのですが、もう思い出すだけでよだれが出そうです・・・
都会で前日まで仕事に追われていたメンバーにとって、なによりも楽しみにしていたひと時でした。

・ご提案・意見交換
と、ここまでは遊んでいるようにしか見えないかもかもしれませんが、
1日目の最大の課題は、多田様の前回の訪問でZESDAのできることを纏めたご提案と現状のヒアリングでした。
前回訪問時から、わずかな時間ではありますが、多田様ご自身も活動されており、意見交換と情報共有をさせていただきました。

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多田様の熱い思いを伺い、今後ZESDAのサポートができることをアップデートし、より強力な信頼関係を築き上げることができたのではないかと思います。
また、多田様へのヒアリング前に新メンバーは、宮地交流宿泊所「こぶし」を訪問・見学し、「こぶし」の今後の活用の方向性についてメンバー内で議論もしました。

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そして、帰り際には民宿「春蘭の宿」で多田様の奥様にご挨拶させていただきました。
多田様に負けず、奥様もとてもパワフルで素敵な方なので、こちらもパワーを頂き、よりよい提案ができればと決意を新たにすることができました。

【2日目】
緩やかな潮の香りで目が覚める、春蘭の里2日目。

・山菜採りへ
前日からお願いしていた春蘭の里での山菜採りを行うため、多田様に多田様所有の山に連れて行っていただけることになりました。
訪問してから何度かお食事で頂いた山菜の説明を受けながら、ZESDAメンバーで山菜を採り、袋にいれていきます。

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多田様の後ろをついて行くメンバー一同の表情は明るく、自然を心から楽しんで、視察を進めました。
都内ではなかなか味わうことのできない、のんびりとしたひと時、
このような場所で、その日食べられるものを育てる自給自足の生活ができたらなぁ、とつい想像を巡らせてしまいました。
その一方、多忙な中、里の再生に取り組んできた多田様の活動の軌跡を拝見して、改めてその行動力に脱帽致しました。

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・自分で採取した山菜を調理
山菜採取後、「海の家」に戻って昼食としてカレーと採取したての山菜を頂きます。
やはり自分たちで採った山菜の味は格別です・・・!
毎日でも食べられたら、健康診断の結果も楽しみになれそうな予感がしました。

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ちなみに一番下の画像の山椒の葉とカレーの組み合わせがメンバー内では大人気でした!
皆さんも是非お試しあれ!(本当に合います!)

・ZESDA一同帰路へ

一通りヒアリングや視察を終えたところで、たくさんのお土産と課題を携え、飛行機組と電車組は帰路へ・・・
多田様には飛行機組を送っていただいた後、電車組のお見送りにも駆けつけて頂き、改めて熱い思いをメンバーに伝えられました。
能登の海と山と美味しい食のあふれる春蘭の里。
多田様の言葉に触れて、この素晴らしい空間をより多くの人に伝えることができればと、思いを新たに致しました。
多田様、そして関係者の皆様、今回の訪問においても多くのお時間を割いていただき、ありがとうございました。
結果を残せるよう、ZESDA一同、今後より一層活動いたしますので宜しくお願いいたします。

官民協働ネットワークCrossover主催 教育ダイアログ “みんなで語ろう これからを「生きる力」” ~こどもを取り巻く環境から公教育の役割を考える~に参加して

教育ダイアログ “みんなで語ろう これからを「生きる力」”
2017年4月22日(土) 13:00~17:00

今回、Crossover主催のイベントに参加してきましたので、簡単にご報告します。
■イベントの目的
『誰もが自分自身の経験から語ることのできる「教育」、だからこそ「唯一の正解」がない「教育」、そして数多くの社会課題解決に向けた出発点であり、ゴールでもある「教育」・・・。こんなテーマについて、日常生活や仕事だけをしていたのでは出会うことのなかったであろう人たちと、じっくり語り合い、お互いから学びあうことのできる場』
~Crossover代表 池田洋一郎さんのメッセージを抜粋~

まさに、上述のような場であり、通常の「ディスカッション」形式ではなく「ダイアログ」という形を取られた意味も感じとれました。
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■内容紹介
★ダイアログに入る前、「プチ講座」で題目に関連する情報・データを提供され、前提をある程度共有した上で話し合いに入る形式でした。よって、色々な経歴の方々が、軸を共有して話を進めることができたと感じます。
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【1時間目】プチ講座・ダイアログ①
これからの時代を「生きる力」を身につけるために、今、あなたが小学生だったら、学校で一番学びたいことは何ですか?
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【2時間目】プチ講座・ダイアログ②
今、こどもたちを取り巻く環境には、「格差がある」と思いますか?それは、あなたにとって身近で、解決しなければならないと感じる課題ですか?
~席替え~
【3時間目】プチ講座・ダイアログ③
置かれた環境に関わらず、こどもたちみんなが、「これからの時代を生きる力」を身につけるために、小中学校はどうあるべきでしょうか?また、私たち一人一人は子どもたちとどう関わるべきでしょうか?
【4時間目】SSM (Super Speed Meeting)
参加者同士でまだ話したことがない人とペアを作り、短時間で深いコミュニケーションをとり、「今日一番の気付きと学び」を共有する。
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■運営に関しての気付き
運営側に関して参考になる面があると思い、気付いたことを簡単に記しておきます。
・班でのダイアログがスムーズにいくよう、「ルール」をいくつか決められていました。
・「ルール」は工夫されており、「形式」に則ることにより、「気持ち」もルールに沿ったものになると感じます。(例:ルール「お互いの意見に反論しない、まずは聴く。」⇒行動ルール「スピーカーはお花を持って話し、次に話したい人にお花を渡す。」)
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・冒頭、「今日学びたいこと」を名刺裏に自分で記入し、最後に「今日一番の気付きと学び」を記入する流れでした。意識を持って活動に参加でき、振り返る仕掛けになっています。
・席がえも予め用意されており、出来るだけ多くの人と話せるよう仕掛けられていました。
ファシリテーターより:「ディスカッション形式よりダイアログ形式はクローズの仕方が難しい。」確かに意見の取りまとめを行うわけではないので、終わらせ方や関わり方が難しいのではないかと感じます。
・運営に携わることで得られる力:①「問い」の切り口を考える力 ②耳を傾ける力 ③発信する力 ④巻き込んでいく力 【池田さんより】⇒このような力を身につけることができるので、是非、参加してほしいとの呼びかけがありました。なるほど。

■内容に関しての感想
それぞれのダイアログで気付きがありましたが、全体的な感想として。
・「教育」は「教育者と生徒」や「親子」等、閉じられた世界や関係性での話しとなりがちだと思うのですが、まずは、このような多様性の中で(立場のしがらみなく自由に)意見交換できる「場」がたくさんつくられることが、公教育を動かすきっかけになるのだろうと感じました。
・日本では特に、「マイノリティ経験」「多様性を実感・体感」できる環境が多くはないので、意識的に環境をつくり、環境から気付く仕掛けを考えていくことは「おとな」としての努めではないかと、今回の場を通じて考えたところです。

■懇親会
アットホームで班以外の人とも意見交換を幅広くできる「場」でした!食べ物もお酒も豊富。。。
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■参考まで
【3時間目】プチ講座で紹介された映画と書籍
⇒「みんなの学校」 大空小学校
http://minna-movie.com/

⇒「21世紀を生きる力」
http://www.gakusan.com/home/info.php?code=0000002929071

運営準備にもかなり時間をかけられ、ディスカッションを重ねられたとのことです。
よい「場」と、よい「仕掛け」でした。

ZESDAも様々なイベントを企画しています。参加者が気付き、何かしらの一歩を踏み出せる場を提供していきたいと考えています!

SAKURA COLLECTIONがベトナム国営放送で紹介されました。

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私たちZESDAも関わったSAKURA COLLECTIONが、文化と人々をファッションでつなぐイベントとしてベトナム国営放送VTV3で紹介されました。

www.facebook.com

 SAKURA COLLECTIONのプレイベントやポップアップショップ、当日の様子がご覧いただけます。
 動画からも伺えるように、多くの方がこのイベントに関わり、当日を迎えました。当日の舞台裏ではモデル、デザイナー、スタッフ各々交流する場面も見られ、このイベントを通して出会えた人との出会いを楽しんでいるようでした。
 この人達にまた会いたいと思う、不思議な引力を感じ、文化と人々をつなぐ場の提供としてSAKURA COLLECTIONの意義を再認識しました。

SAKURA COLLECTIONに関わり、プロデュースの大変さや続けていくことの難しさを学ぶことができました。次のZESDAの活動へもこうした経験を活かしていきたいと思います。

SAKURA COLLECTIONに関するZESDAの活動はこちら。
http://zesda.hatenablog.com/entry/2017/04/12/081006

Dr. Robert Eldridgeより「トモダチ作戦の省察と災害協力の未来」 Platform for International Policy Dialogue (PIPD) 第35回セミナー開催のご報告

NPO法人ZESDAは、「官民恊働ネットワークCrossover」(中央省庁の若手職員を中心とする異業種間ネットワーク)との共催、株式会社クリックネット まなび創生ラボ株式会社自由が丘パブリックリレーションズの協力により、在京の大使館、国際機関や外資系企業の職員、及び市民社会関係者をスピーカーに迎え、国内外の政治・経済・社会問題について英語での議論を通じて理解や問題意識を高める、「Platform for International Policy Dialogue (PIPD)」を開催しています。


5月9日(火)の朝7:30から開催した第35回PIPDセミナーは、第28回セミナーで「沖縄問題の真実―米国海兵隊元幹部の告白―」を、第29回セミナーでは「2016年米国大統領選を理解するために」をテーマにお話いただいたDr. Robert Eldridgeを改めてゲスト・スピーカーとしてお招きし、「トモダチ作戦と今後の災害協力(Reflecting on Operation Tomodachi and the Future of Disaster Cooperation) 」をテーマにお話し頂きました。なおDr. Eldridgeは、在日米軍沖縄海兵隊司令部の元高官であり、東日本大震災発生時に米国海兵隊が展開した「トモダチ作戦」の成功に主導的役割を果たされました。現在、日米関係、沖縄問題、東アジア情勢、防災関係などを中心に様々なメディアを通じて出版、執筆、翻訳活動を展開されています。

◆人と人との絆の構築こそ、最重要な災害対策
冒頭、Dr. Eldridgeは東日本大震災時の経験を振り返りながら、「次の大災害に対する最も大切な備えは個人的な人間関係を構築することだ」と強調されました。大災害への対応は、自衛隊、自治体など、一つの組織だけでは限界があり、他の組織との切れ目ない、効率的・効果的な協働が必要です。そのためには、培われた「個人的な人間関係」が重要であり、Dr. Eldridgeは、震災時に、日米の知り合いや関係者をつなぎ、円滑な協働を生み出すことに尽力されました。
また「こうした個人的な関係を築き、将来における協働を生み出し、育てていく機会として、Crossoverは非常に良いモデルです」と、私たちの活動を高く評価して下さいました。

◆災害時の他国からの救援に関する日本政府の認識について
Dr. Eldridgeは、海兵隊が日本の災害対応に協力したのは東日本大震災における「トモダチ作戦」が初めてではなく、古くは米国海軍が協力した1923年の関東大震災に始まり、戦後間もない1948年の福井地震、1959年の伊勢湾台風、そして1964年の新潟地震等、長きに亘る実績があることを紹介されました。

しかし、1964年の新潟地震以降、1995年の阪神淡路大震災まで約30年の間、大きな災害が無かったことから、日本の危機管理は脆弱になってしまっていた、と指摘されました。このことは、Dr. Eldridgeが神戸大学大学院生時代に被災者の一人となり、また復興ボランティアとして救援活動に参加した阪神淡路大震災において、日本政府が海外からの支援受け入れに多くの時間を要したことに表れていた、と振り返られました。

この時の経験を踏まえ、Dr. Eldridgeは2006年から災害対応における海兵隊と日本政府・自衛隊との迅速な協力を可能とするための相互支援協定の必要性を多くの政治家、政党に説いて回りました。激震災害発生時であっても他国は主権国家である被災地国政府の要請がなければ軍隊を派遣して支援活動を行うことはできませんが、事前に協定を結んでおけば、必要なプロセスを大きく短縮し、迅速に活動を開始することができます。
しかし「日本だけでできる」という考えばかりで、海外からの救援が必要とは考える人は皆無であったそうです。Dr. Eldridgeは、2011年の3月10日、まさに震災の前日にも、総理官邸に対して同様の提案していたものの、それは受け入れられないまま、東日本大震災は起こってしまいました。
もし協定が事前に締結されていれば、アメリカ海兵隊が活動を開始するまでに1週間ではなく、2,3日でできたのではないか、とDr. Eldridgeは述べられました。

◆日本の災害対応について
Dr. Eldridgeは多くの課題があったものの、「ともだち作戦」が最終的に成功に終わったのは、日本の優れた社会基盤のお蔭であったと指摘されました。具体的には、①パニックに陥らず秩序を保つ国民性、②迅速に医療やボランティアが提供される社会的インフラの強さ、③自衛隊の能力の高さ等を挙げられました。特に、自衛隊については、被災地で活動する多くの隊員が東北出身であり、彼らもまた被災者である可能性が高いにもかかわらず、素晴らしい活動ぶりであったと高く評価されていました。もしこれらの要素が、多くの途上国のように一つでも欠けていれば、より混沌とした状況になっていたと思われるとのことです。こうした基盤の上で、アメリカ海兵隊の活動が位置づけられるだろうと話されました。
一方、課題についても紹介いただきました。まず、自衛隊については、彼らの国内における活動は素晴らしい一方、他の組織、具体的にはアメリカ海兵隊との協働については、改善の余地が大いにあったということです。アメリカ海兵隊は、東アジアにおいて、スマトラ沖地震への対応を始めとして、他組織と協働して災害対応にあたる豊富な経験がありますが、自衛隊はその能力を十分に把握し、活用したとは言えないと指摘。この点について、アメリカ海兵隊の幹部は「今回の災害対応では、我々の能力の1%程度しか発揮されなかった」と述べたとのエピソードも紹介されました。
Dr. Eldridgeは、その原因として、日本政府及び自衛隊が、アメリカ海兵隊の能力を十分に理解していなかったことを挙げられました。また、双方の意思決定や作戦の立て方の違いについても指摘されました。自衛隊は事前に綿密に作戦を立て、また想定される結果も事前にシナリオを作ったうえで、それに則して上意下達で活動が展開される一方、海兵隊は、作戦の前提となる仮定や想定の一つ一つをその都度議論し、検証していくプロセスがあるということです。

ここで参加者から、「自ら立てた前提や計画に縛られてしまう」という多くの組織に見られがちな傾向が海兵隊の間には見られない背景について、質問がありました。これに対してDr. Eldridgeは、「海兵隊は独自の養成学校を持たず、理論先行ではないこと」、「メンバーの多様性が確保されており官僚組織的な意思決定がなされにくいこと」を理由として挙げられました。一方、自衛隊については、ほとんどの幹部は防衛大学校を卒業しており、均一の環境の中で育ち、意思決定に関する多くの前提が共有されてしまっていることから、独創的な思考や議論は難しいのではないか、と指摘されました。

自衛隊海兵隊の協力について
このように、東日本大震災におけるアメリカ海兵隊の活用は必ずしも十分ではない部分があったにせよ、自衛隊との協働は、故君塚栄治大将の指令の下、海兵隊自衛隊が、その属人的つながりによって相当程度円滑になされていたことを示すエピソードを共有してくださいました。

Dr. Eldridgeは沖縄海兵隊勤務当時に、東日本大震災時の自衛隊の指揮官であった君塚大将と知己を得たそうです。またアメリカ海兵隊のGlueck司令官は日本駐在経験が4回あり、君塚大将とは旧知の仲、そしてスマトラ沖地震に対応した経験もありました。そんなGlueck司令官が日本に異動してきたのは東日本大震災の発災2ヶ月前であったということです。そのように豊富な経験があり、かつ、自衛隊の指揮官と旧知の仲である者がこのようなタイミングで海兵隊の司令官として異動してきたことは奇跡と言える、とDr. Eldridgeは振り返られました。

◆今後の課題ついて
Dr. Eldridgeは次の大災害に対する備えとしてについても、考えを述べられました。
冒頭指摘されたとおり、個人的な人間関係を広く構築していくことがまず大切であるとのことです。そのため、Dr. Eldridgeは高知県和歌山県三重県静岡県等の自治体や、病院や消防職員との公式・非公式なネットワークを築いています。海兵隊との協働について働きかけても反応が鈍い場合には、これまで築いてきたネットワークを活かし、その自治体選出の有力政治家の影響力にも頼ることで望ましい結果を得ることが出来た、とのエピソードも紹介して下さいました。
また、海兵隊が救助・支援に当たった気仙沼大島の被災者を、他の自治体の災害対応担当者とつなげるべく、被災者による講演会を沖縄で開催するなど、人と人をつなげるような活動も精力的にされているとのことです。この中では、自治体の災害対応担当者は、災害発生時には、自分自身及びその家族が被災者となる一方で、同時に災害対応にも当たらなければならないことから、日常的に訓練されていることが重要であることなどが共有されています。
さらに、外国人留学生についても、彼ら彼女らに災害対応の知識があれば、バイリンガルとして被災外国人の誘導や、外部からの支援の受け入れに大きな役割を果たすことができると指摘されました。

◆Dr. Eldridgeが出版されている書籍ついて
最後に、Dr. Eldridgeが執筆又は翻訳された本を紹介していただきました。
一冊は、小説家である高嶋 哲夫氏が書いた震災関係の書籍の英訳版である「Mega quake 」です。日本の東日本大震災における対応について書かれたこの書籍を英訳することで、①途上国など災害対応が未熟な国に教訓を活かすこと、②国際機関・組織が日本の特性を理解し、それにより来たるべき救援を円滑にすること、を目的としているとのことでした。
さらに、今回の講演のテーマである東日本大震災関係として、「次の大震災に備えるために―アメリカ海兵隊の「トモダチ作戦」経験者たちが提言する軍民協力の新しいあり方」、「トモダチ作戦 気仙沼大島と米軍海兵隊の奇跡の“絆"」の2冊を紹介してくださいました。特に後者については、まだ2月に発売されたばかりですが、今回の講演で語られなかった各関係者との調整の内実を含め、Dr. Eldridgeの当時の活動内容が詳細に記されているとのことです。
なお、Dr. Eldridgeはご自身の震災関連の著作の印税を原資に、「大島っ子の夢と将来基金」を設立、教育、文化、スポーツ、国際交流等の分野で気仙沼大島の子どもたちの活動に支援をする団体や個人に補助金を交付する活動も展開されています。

会場は、リーダーシップ、先見性、献身、そして忍耐力を持ってトモダチ作戦を成功に導いてくださったDr. Eldridgeと米国海兵隊の皆さんへの心からの感謝の気持ちを込めた大きな拍手に包まれました。


今回も株式会社クリックネット社長の丸山剛様、並びに社員の皆様のご厚意で、セミナー会場として同社が主宰する「まなび創生ラボ」をお貸し頂きました。この場をお借りしてお礼申し上げます。有り難うございました。