ZESDA's blog

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女性プロデューサー集結!イノベーションを語る!シンポジウム 5/12(土)@お茶の水女子大学 開催レポート

5月12日、学会・NPO・業界団体・総務省等の産官学民連携シンポジウムが、お茶の水女子大学にて開催されました。

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「ICTとプロデューサーシップ」シリーズの第2弾になりますが今回のパネリストの皆さんは何と全員、女性です!

第1弾開催時、参加者の方々から沢山の要望があり、今回、様々な分野の第一線で活躍されている「日本屈指」の10人の敏腕女性プロデューサーに集まって頂き、お話を伺うことになりました。

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まず、主催団体である研究・イノベーション学会プロデュース研究分科会主査の久野美和子氏より、開会の挨拶がありました。

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「今回のシンポジウムの特徴は、主に3つあります。

①女性
②プロデューサー
③ネットワーク型の横の連携

まず1つ目は、登壇者に女性を集めた事です。新しい事、すなわちイノベーションを起こすのは一般的に(単に年齢という意味だけではなく、気持ちが若い)若者、そして女性が多いので、今回は『女性』にスポットを当てました。女性にはヒエラルキーを好まなかったり、従来のしきたりにとらわれないなど、イノベーションを起こすのに重要な特徴を持っています。
2つ目は、プロデューサーとは何かを、ここで皆さんと考える事です。日本は研究成果や新しいイノベーションに対して商品化したり、事業化する等といった価値づけが弱いと考えています。ヒト・モノ・カネを組み合わせて皆で作る事を企画できる、真のプロデューサーは日本ではあまり育っていないというのが現実です。
3つ目は、今回のパンフレットを見ると分かる通り、沢山の主催・共催・後援が並んでいます。これは、単一組織・モノカルチャーによるイノベーションが困難になってきており、誰かが一つの事をやるためには、沢山の人の助けが必要であること、つまりネットワーク型の横の連携が重要な、複合型の社会になってきているということの表れでもあります。
今回のシンポジウムをきっかけに、是非皆さんも次の活動につなげていってください。」

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次に、共同開催ならびに今回のシンポジウムの会場を提供していただいたお茶の水女子大学理事・副学長の森田育男氏からのご挨拶です。

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「私は、昨年まで東京医科歯科大学におりまして、現在と同様研究と産学連携の担当理事を8年間勤めていました。こちらに来てからも、組織対組織の産学連携を推進している段階で、医学系の産学連携ネットワークも作ったりもしています。そこで感じたことは、大学においては先生方の意識改革が必要であり、産学連携推進に関してはプロデューサーが必要であることです。しかし意識改革や人材育成は一朝一夕でできるわけではありません。
そんな中、今回のシンポジウムは非常に縁が深いものと思っています。登壇者が全員女性ということも、本学にとってはとても重要です。というのも実は10月から新たな寄付連携講座として、女性活躍推進連携講座を新たに立ち上げる準備を進めているからです。異なる30業種30企業の方が作る寄付連携講座で、大学の学生を巻き込んだ形で将来のダイバーシティ実現の為に何が必要か、参加企業ともに考え実践していく講座です。女性の活躍なしでは日本社会の発展がないことは間違いなく、本学が果たす役割も大きいと考えます。

本日は長時間になりますが、超一流の女性プロデューサーの方々に集まって頂いておりますので、ご参加いただいた方にも十分満足していただける内容になると思っています。
素晴らしいシンポジウムになります事を祈念し、開会の挨拶とさせていただきます。」

プログラムは、第1部が基調講演、第2部は女性プロデューサーの方々の講演と、パネルディスカッション、第3部は特別対談の3部構成となっています。


【第1部】

~ICTとプロデューサーシップによる地方創生・地域の課題解決について~

最初の基調講演は、前総合科学技術・イノベーション会議委員の原山優子氏です。
society5.0の作成に携われたご経験等を踏まえて、リーダーに要求される能力について、ご自身のお考えをお話し頂きました。

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原山さんは、今の時代は「かなり早いスピードで社会変革が起きていて、どうしたら良いか考えている間に次の事が起きてしまう程、変化の激しい時代になっている」と指摘しました。

「だから、どういう社会を私たちが目指しているのか、そのために何をしたら良いのか、スピード感を持って考えなくてなりません。その際に必要とされるのが、アイデアを持つイノベーターですが、色んな人やアイデアを溶け込ませる事が出来るプロデューサーの力も必要です。一人で両方できるという人もいますが、協働という発想もあります。
また、皆さんにも考えていただきたいのが、私たちは『二分法の呪縛』から解放される必要があることです。先進国と開発国といったように、私たちは文脈を分かりやすくするために『二分法』を良く使います。しかしこの方法だと、私はどっちかなというポジショニングに囚われてしまい、そこで発想が止まってしまうのです。それに囚われない発想が、これから時代、なにかを仕掛けていくためには必要なのです。
もう一つ、リーダーシップの話をしたいと思います。誰がリーダーシップを取るのかですが、最初に思い浮かぶのは社会的地位のある人、組織の長だと思います。しかし、それだけではなくて、外から見て、あ、この人だなと分かる人、つまり社会的な認知も、今後は鍵になってくると思います。必ずしも組織がないと取れないわけではありません。
そして、リーダーシップの取り方ですが、枠を超えてリーダーシップを発揮できるリーダーが求められています。これからの時代のリーダーに求められる能力は、相手の意見を聞き趣旨をくみ取ることが出来る能力、そして、既存の枠に囚われることなく、発信力があって、色んな人を巻き込んでいける能力が必要になります。そういった人材を育てるためには、今までの大学や企業の場での教育では立ち行かなくなってきています。教育のあり方についても、再考する事が重要になってきています。」


~ICTによる地域貢献施策~
次の基調講演は、総務省 情報流通行政局長の山田真貴子氏です。
ICTは、地域にどのような貢献をもたらすのか。地域のICTによる課題解決事例を通じ、ICTを活用して地域が抱える課題をどのように解決に導いたのか、そして、ICTが描く可能性についてお話し頂きました。

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「日本ではゆっくりと人口減少、そして生活水準の低下が進行していて、特に地方においてこの問題は深刻になっています。この『静かなる有事』に備えるために、私達はICTを徹底的に活用し、ポジティブに社会に変えていく必要があります。
ICTにより地域課題が解決出来た例は沢山あって、例えばさいたま市では、保育園入所選考業務にAIを活用した結果、今まで延べ1000時間かかった作業が数秒で実現しています。 また、自治体が花火大会などのイベントを開催する際に、一時的に駐車場が不足してしまう問題があったのですが、地元住民や地元企業が持っている遊休地を有効活用して、駐車場シェアリングサービスを導入した結果、駐車場不足が解消し、渋滞や不正駐車の軽減にもつながりました。
自治体にはICT知見を持つ人材が不足していたり、情報が十分にないケースも多いため、総務省では、地方公共団体等からの求めに応じて、ICTの知見等を有する『地域情報アドバイザー』を派遣し、助言を行っています。アドバイザーはまさにプロデューサーであり、求められる能力は、やりたいことを魅力的な言葉で表現できる力、スケジュール管理能力、シンポジウム開催したりする等の仕掛けづくりが出来る能力、そして最後に何より、信念を持っている事です。」


【第2部】

第2部では、「地域の課題解決とプロデューサーシップ」をテーマに女性プロデューサーの皆さんの話を伺いました。

第2部のトップバッターは、本日の司会進行役を務めている、清水章代氏です。

NPO法人ZESDA・プロデュース研究分科会の活動について~
NPO法人ZESDAの清水さんは約5年間に渡りZESDAで活動しており、現在はカレッジ部門長を務めています。彼女自身が女性プロデューサーとして様々な活動に携わってきたことから、今回、登壇者として参加することになりました。

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「一般的に良く知られている『プロデューサー』は、エンターテイメント業界にいる、タレントさんや裏舞台の技術系の人たちを集めて、新しい事を創り上げる人を指しています。しかし今、イノベーションが起きているビジネスの世界においても、多様な人やアイデアを繋ぎ合わせて、新しい価値を生み上げる事が出来る『プロデューサー』が求められています。
NPO法人ZESDAは『プロデューサーシップ®』により、日本発のイノベーションをおこすことを理念に掲げています。職場や学校などの本業ではなく、家庭や友人などのプライベートでもない『第三の場所(サードプレイス)』が今熱く、ZESDAでも様々な動機から参加したスタッフが100名ほど在籍しています。そして、ZESDAは冒頭で申し上げた『プロデューサー』を育成する場でもあります。
ZESDAでは様々な活動を行っていますが、例えば、昨年から今年にかけ、ある女性起業家の支援を行いました。具体的にはアジアのプロのデザイナーと学生デザイナーが、日本の織物や生地を使用して、日本をテーマに考えたデザインを披露するSAKURA COLLECTIONというファッションショーの運営をサポートしました。
また、地方創生への取り組みも行っていて、石川県能登地域にある農家民宿群『春蘭の里』の支援を行っています。昨年は2回現地へ赴き視察を行い、今年3月には都立公園を会場にして、交流会イベントも開催しました。
この他、ZESDAと関わりの深いプロデュース研究分科会での活動も行っており、更にこれからは4月に入学した大学院で研究も行う予定です。これらの活動が世の中にどれだけ効果をもたらすのか、また講座参加者の行動変容にどうつながったのか、定期的に調査を行っていきたいと思っております。今後ともご協力、よろしくお願いいたします。」


児童養護施設、そして「ゆでたまご」の活動について~
次は、本日の最年少女性プロデューサーである、阿部華奈絵氏です。阿部さんは、高校3年間を児童養護施設で過ごし、ご自身の経験を経て感じた、ある強い信念から有志団体「ゆでたまご」を立ち上げました。

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「普通の家庭で育った子供と児童養護施設で育った子供には大きな違いがあります。それは18歳で自立をしたとき、頼れる親や後ろ盾の存在がいない子供は、社会で一度失敗したら再挑戦が出来ないということです。
実際、親の代わりとなって様々なサポートをしてくれる団体は沢山あります。しかし、多くの施設経験者は、その支援団体の存在をしらないまま社会に出てしまいます。必要な情報が必要な人に届いていない!と感じました。支援団体と施設経験者をつなげる仕組みを作りたい、そのための手段として、『ガイドブックを作って施設経験者に配りたい』と思うようになりました。一人ではできないので、SNS等を使って声を上げた所、予想以上に様々な年齢層、異なる業種の仲間が集まってくれて、有志団体「ゆでたまご」を立ちあげることになりました。主な活動内容ですが、望まれている情報は何か等アンケート調査を行いながらガイドブックを完成させ、各施設を通じて児童に配布しています。予算は、チャリティ活動や講演等を通じて予算をねん出しています。
私の最終的な目標は、『ガイドブックをなくすこと』にあります。ガイドブックを作ろうと考えたのは、人のつながりがなく、情報が入ってこないから。でも、いずれ、それがなくても人とのつながりで、必要な情報が必要な人に届くような社会を目指していきたいと思います。」


~前例のない福祉避難所の開設支援の経験~
次は国際医療福祉大学大学院教授の石井美恵子氏です。石井さんは、「災害医療のスペシャリスト」として、東日本大震災で災害支援の現地コーディネーターとして派遣されるなど、様々な経験をお持ちの方です。

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「私は保守的な環境で育ったため、子供の頃から女性は自立しないといけないという思いを持っていました。社会人になって看護師になりましたが、そこでも看護師と医師のヒエラルキーを感じ、悩んだ時期もありました。そんな時、アメリカで災害医療の長期研修に行く話が舞い込んできて、チャンスと感じ、思い切って参加をしました。帰国後イランで地震が発生。手を挙げて現地に向かいました。
イランの他に中国など、その後何か国か海外の災害医療支援に行く機会がありましたが、様々な経験を通じて私自身、上手くいったなと思っているのは経験の再構成、つまり『ストレッチ』『リフレクション』を行って次のミッションにつなげていくことが出来た事です。そうすることで、色んな課題が見えてくるのです。
東日本大震災が起きたときは、教員として日本看護協会に所属していましたが、根回しの結果対策本部の会議に参加でき、そこで周囲の信頼を勝ち取って現地コーディネーターというポジションを得る事が出来ました。豊富な人的資源を、必要な所に優先して配置したい、そんな強い思いがあったためです。
一番大変だった石巻に赴任し、福祉避難所を開設して多職種連携のチームを作りました。
そこでは私は陰に徹し、リーダーを立てながらどうやったら上手くいくかを常に考えて行動しました。
災害対応はいつもゼロからスタートします。後世に遺産を残すための教育とシステムの構築が必要です。そして日本はいつまでたっても避難所=体育館ではなく、むしろ避難所はいらなくて、避難生活の場を作りたいと思っています。そして私の目標は、関連死(これは防ぐことが出来ます)、これをゼロになくす社会を作っていきたいと思っています。」


~地域(山口県萩市)の課題解決とプロデューサーシップ~
次の登壇者は株式会社コスモピア代表の田子みどり氏です。田子さんは、男女雇用機会均等法が制定される以前、女子大学生の時に起業され、女性が活躍できる環境を切り拓いてこられました。

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「私は山口県萩市で生まれ育ちましたが、地方都市の宿命として、他の若者と同様に、私も高校卒業後は萩を出て、東京の大学に進学しました。当時はまだ、男女雇用機会均等法の影も形もない時代で、大卒女子の就職は狭き門しか開かれていませんでした。そこで、会社のコネが出来るのではという下心のような思いもあり、ある企画事務所に入門しました。そこに集まっていた女子学生たちと仕事の実践の場として作ったグループが、現株式会社コスモピアの前身です。
会社経営の傍ら結婚、出産、離婚、再婚など人生の荒波をくぐり、しばらく実家に帰省する機会はあまりありませんでした。しかし、高校卒業30年後の同窓会の幹事役がきっかけで、故郷との関わりが再開しました。故郷が廃れているという同級生の話を聞き、何とかしたいという思いが湧いたのです。そんな時、山口県出身のベンチャー企業の社長が集まる会の会長をしている方とお話しする機会がありました。その会は、NPO法人ふるさと山口県経営者フォーラムへと生まれ変わり、私は現在常務理事事務局長を務めています。
私は山口県を中心とした様々な地域活動に関わってきましたが、専門家でもない私が様々な立場を引き受けるのは、自分の能力を超えているのではと悩んだりすることもしばしばです。しかし、最近は、ひとつひとつバラバラに見える活動や立場が、真珠をつないでネックレスを作るように、ゆるやかに繋がりあって意味を成してきているように感じる事があります。
それを繋いでいるのは、35年間会社を経営し、公私において様々な失敗や苦労をしながら集積した経験知とネットワークによるものです。設樂剛事務所の設樂剛先生は、未来社会の中核的存在となりえるのは強いリーダーではなく『インターミディエイター』であると提唱しています。中間にいる人、異なる世界を繋げていくもの、人、という意味です。これから私が目指すべきは、インターミディエイターとして、成果を出していく事だと考えています。」


~「ネガティブ・ケイパビリティ」を持つ「介助者」とは~
新聞記者を経て、現在は、NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボで活動を行っている宮島真希子氏は、価値ある地域資源について常にリサーチし、新たなつながりの創出に取り組んでおられます。

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「私は長い間、神奈川新聞社に勤めておりました。その時感じていた事は、新聞社といったメディアは、イベントなど華々しい場しか取り上げず、地域の小さな活動の目やプロセスについては殆ど興味を示さない、または知らないという事でした。そんな折、記事に対する読者からのコメントを受け付け、双方向性のやり取りが出来る、当時画期的な試みでもあったブログ『カナロコ』の編集を担当することになり、地域との繋がりを初めて持つことが出来ました。ブログがきっかけとなって、肩書のない人と知り合い、もっとプロセスそのものに関わりたいという思いが強くなって、『カナロコ』の取材に来てくれたNPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボに興味を持ちました。私は新聞社を辞めて、ローカルなインターネットメディアへの市民参加を促進する活動をしているNPO法人で活動をすることにしました。
私は、プロデューサーとは、新しい事を生み出すときの介助役、産婆のような役割であると考えています。私自身は生み出すわけではありませんが、対話の場を作り、地域の人の背中を押し、自己発見をしてもらう役割を担っています。
また、『ネガティブケイパビリティ』という考え方があります。事実や理由をせっかちに求めずに、不確実さや不思議さ、答えの出ない事態に耐えうる力という意味で、これがプロデューサーには求められると思います。なぜならイノベーションは長丁場で取り組む必要があり、ポジティブなだけではしんどいからです。様々な状況に耐えながら、虎視眈々とチャンスを狙う力が、これからの時代には求められると思うのです。」


次は、パネルディスカッションの時間です。第1部の基調講演を行って頂いた原山さんと山田さんにもここで加わって頂きました。
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登壇者と会場の参加者の方との間で、いくつか質問と回答が飛び交いましたが、最後に、ある参加者の方から『リーダーシップ』についての質問がありました。

「皆さんの話を伺いながら、皆さんの持っている共通点は何だろうかと考えていました。それで気づいたのはそれぞれが仰るリーダーシップの取り方が面白く、いわゆるビジネス本に書かれているようなやり方とは違う方法だなと。これからの変化のスピードが速い時代では、所謂オトコ的なリーダーシップは不要となり、皆さんのやり方が主流になるのではないかと感じていますが、それについてはどのように考えていますか。」

この問いに対し、登壇者の方各々に、リーダーシップ論を語っていただきました。

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山田さん「昔は登るべき山が決まっていたけど、今はどの山に登るのか、それとも登らないのか、というところから決めないといけない時代です。一方で大災害等ひっ迫した緊急時には、違うリーダーシップが求められます。時代や場面に応じてリーダーシップは変わっていかないといけないと感じています。」

石井さん「私は、他者にとって正しい事をするのがリーダーだと思います。あと、俺がこれをやったんだよねというスタンスは駄目。問題解決が実現できれば良いのであり、そのために自分はどういう役割を演じたらよいか、変幻自在に自分を演じる、セルフコントロールする力も必要と思います。」

宮島さん「事が難しい時にこそ、平和に、クリエイティブにいかないといけません。感情的な対立が起きると、本質的な問題から外れてしまい、必要な議論が出来なくなるからです。」

田子さん「強いリーダーって、重いし楽しくない。会社経営をしていると、この仕事は来年もあるのだろうかとか、本当に先が見えないことが多いので、私は、皆、こっちにいこうよ、というスタンスを取っています。その方が日々楽しく過ごせると思います。」

阿部さんゆでたまごのメンバーは皆私よりも年上で、知識も経験も豊富です。自分には出来ない事も多いから、皆に任せます。任せるようにしています。あとは、とにかく思いを伝えるのがリーダーです。思いを伝えて形にしているのがメンバーです。」

清水さん「本業を持ちボランティアで活動しているスタッフ達を、どのように巻き込んでいくか、という力が求められます。素直に一緒にやろうという、一歩下がれるリーダーが今の活動に必要だと思っています。」

原山さん「これまでのリーダーシップ論は、過去のビジネスケース等を集めてまとめられたものだけど、今この変革スピードの速い時代に、この概念はあてはまらない場合が多いです。そしてインセンティブよりモチベーション。やりたいという気持ちを引き出す力、そして謙虚であることが重要です。」

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この質疑応答を受け、シンポジウムの企画立案を行った、プロデュース研究分科会実行委員長の中原新太郎氏から最後に一言挨拶がありました。

「会場の皆さんが既にお気づきになられている通り、今回のシンポジウムは、様々なバックグラウンドを持ち、様々な分野で活躍されている方に集まっていただいています。多様な人が集まらないとイノベーションは起きません。それを伝えるべく、このような人選をさせていただきました。」

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登壇者の方一人ひとり、ご自身の経験も重ねながら、本当に多種多様なリーダー像を語ってくださいました。


【第3部】
第3部は、特別対談です。「2020東京オリンピックパラリンピックに向けたプロデューサー」について、1998年の長野冬季五輪IOCリエゾンを務められた麻生菜穂美氏、NPO法人STAND代表理事の伊藤数子氏より、お話を伺いました。

麻生さんからまず、2020年オリンピックが東京で開催されるに至った経緯を、詳しくお話していただきました。
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「2020年の東京五輪は4回目の招致を経てようやく決まりましたが、他の候補イスタンブールマドリードを破り、なぜ東京に決まったのだと思いますか?
トルコは民族紛争、スペインの経済・政治不安という懸念要素がありました。日本も2011年に東日本大震災がありましたが、その時、きちんと並んで給水車を待ち、食べ物を皆で分け合う日本人の姿の映像が、全世界に放送されました。日本人の礼儀正しさ、優しさが全世界に伝えられたのです。日本での五輪開催は、今度で4回目です。中国ですら2008年北京五輪の1回しか経験していません。こんな小さな島国が、4回も五輪が開催されるのはすごいことなのです。
そして、実は、2020年五輪の開催地が決まるIOC総会では、同時に次期会長も選出されることになっていました。選出されたのはドイツ出身のバッハ会長です。そのため、2020年五輪の開催地は、ヨーロッパ以外の国が選ばれることになりました。これがIOCのバランス感覚なのです。本日のテーマ、プロデューサーシップにも通じてきますが、すべての国と付き合わなくてはならないIOCは、このようなバランス感覚が非常に重要です。さらに、2024年の五輪はパリで行われる事になりましたが、実はこちらは2020年五輪より前から決まっていました。何故ならばちょうど100年前の1924年の五輪はパリで行われており、2024年を100周年として、同じパリでやりたかった。そのため2020年は、パリと同じヨーロッパ圏であるマドリードは候補から落ちてしまったのです。これもバランス感覚ですね。」

そして麻生さんご自身が今、感じている事も話してくださいました。

「私は現在宮城県に住んでいますが、そこで感じていることは文化の力は何物にもまさるということです。子供たちが郷土に誇りを持てないために、地方がどんどん過疎化していってしまうのです。ここには何もないつまらないところ、と大人から擦りこまれてしまっています。自分の国に誇りをもって、そのうえで英語のコミュニケーションが出来て、グローバルな時代に対応できる子供を育てていきたいと思っています。」

次に、伊藤さんより、何故障害を持った方のスポーツに興味を持ち、NPO法人を立ち上げるに至ったのか、お話しいただきました。

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「私が障害者の方のスポーツに興味を持ったのは、知り合いから誘われて、地元の電動サッカーの試合を観にいったのがきっかけです。想像以上に面白くて、応援していた地元のチームもどんどん試合に勝ち進んでいったのですが、その中で私が驚いたことは、全国大会に出場できない選手がいたということです。上の大会には、選手は皆、参加するのが普通だと思っていましたが、障害のある方は症状により、試合に参加できないことがあるのです。そこで試合に行けない選手にも見てもらいたいと思い、IT関係の知り合いの協力を得て、インターネットの生中継をしてもらうことにしました。
ところが当日会場で準備をしていると、ある男性の方が私達に近づいてきて『障害者を晒し者にしてどうするつもりや』と怒鳴られてしまったのです。その時私は動転してしまいました。もしかして自分はとんでもないことをしてしまったのではないかと。
しかし暫くして落ち着いて、『晒し者』という言葉について調べてみると、晒し者とは『人前に出て恥をかかされた人』であると。
絶対におかしいと思いました。何か社会が違っているところがあるのではないか。障害のある人のスポーツをもっとみんなに知ってもらったら、そこの選手が、社会が変わるのではないか。それで、2005年にNPO法人を立ち上げたのです。
主な活動内容は、ウェブサイトで情報発信して、障害のある人がやるスポーツを、障害のある人とない人で一緒に体験する体験会をやったり、2020年パラリンピックのボランティアをやりたい人達から要望があってボランティアアカデミーを立ち上げたりしています。」

また、伊藤さんは2020年パラリンピックに向けての思いも話してくださいました。

「あまり知られていませんが、1964年は東京パラリンピックも開催されました。その時、障害者の自立が課題に残されました。53人の日本人選手団のほとんどが日常的にスポーツをやっていないどころか、施設か病院で暮らしていて、職業を持っている人は3人のみ。病院で短い命が終わるのを待っていたのです。
2020年パラリンピックでは何か遺産を残したい。それは共生社会です。ボランティアアカデミーで勉強している人たちが、この2年の間に色んな知見をため込んでいきます。自治体の持っている推進本部は、2020年度になくなりますが、知見をため込んだ沢山の人たちの力を使い、2020年以降も継続的に社会を動かしていける、そんな仕組みを作っていきたいと思います」

次に対談形式で、お二人に、苦労したことや失敗談、それを踏まえて感じた事などをお話ししていただきました。

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麻生さん:何かを動かすことはとても大変なこと。でも、本気になる人が3人いたら、どんなイベントでも出来ると私は思っています。私は長野五輪の時には、開催する地域とIOCを繋ぐ仕事に携わりましたが、たまたま運よく、事務総長等現場のトップの直轄に配属されました。関わった仕事は、競技運営、文化式典、チケット、マーケティング、報道、広報、システム、等々本当に盛りだくさんで、もちろん失敗も数えきれない程ありました。でも、五輪に関われる人間は世界中でもほんの一握りです。本気でやりたいという熱い思いを持つ人が3人いるかどうかです。そして、こういう場では違う考え、違う環境で育ってきた人が同じことをやる必要があります。調整力が大事です。木だけでなく森も両方見れる人、全体を把握している人が必要です。

伊藤さんNPOを始めて、最初は応援してくれる人がいる、上手くいくと思っていました。ネット中継をやってほしいという話もあったのですが、いざ企画書と見積書を持って説明に行くと先方に、『お金払わないといけないの?』と驚かれてしまいました。NPOは無料でやってくれる人達と周りに思われていたようです。NPO立ち上げて最初の2年間は本当に大変でした。最初私が思っていたことと実際が違っていたこと、ギャップが大きかったです。」

麻生さん:今日は色んな話を聞かせていただきましたが、全ては同じことで、人を繋いでいって未来を共有していくこと。同じ未来を見て、皆がそれぞれの分野で少しずつ変えていく事が大事だと思います。

最後に、会場の参加者の方からの要望もあり、パラリンピックを楽しむコツを伊藤さんに教えていただきました。

伊藤さんパラリンピックの楽しみ方ですが、ポイントは3つあります。1つ目は、パラ競技は、ルールが工夫されています。例えばバスケットボールですが、5人のチームの一人一人に点数を持たせており、動きやすい人だと4~5ポイント、殆ど動けない人は2ポイントといったように点数が割り当てられ、全員で14点以内になるようにチームを作らなくてはなりません。そこに戦略があるのです。そのため、単に背が高い人が優位という一般のバスケットボールより面白いという人もいます。2つ目は、自分が応援できる選手を見つけてほしい。好きな選手が出来れば楽しんで観る事が出来ます。3つ目は、東京を中心に沢山の国内大会が開催されているので、それをまずは観に行ってみてください。パラリンピックまで待たずに、とリあえず何か、観に行ってみることをお勧めします。

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これで、長時間に渡る全てのプログラムが終了しました。
最後に、研究・イノベーション学会プロデュース研究分科会主査、およびNPO法人ZESDA理事長の桜庭大輔氏より、閉会の挨拶がありました。

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「今日は本当に良い話を伺うことが出来ました。プロデューサーは『懸け橋になる』ということ。でもそう言うのは簡単で、現場は死ぬほど難しいという話を今日は聞くことが出来ました。
自分以外の主役がいるときに、その人を立てる事が出来る力。リーダーシップに新しく求められるのは『補完性』です。そして、誰かの間に入るという事は、他者の目線を持ち、相手の事を考える事でもあります。分科会や、今日のシンポジウムを通して改めて感じた事です。本日は登壇者の皆さん、参加者の皆さん、本当にありがとうございました。」

プログラム終了後、登壇者の方々や会場の皆さん、主催団体スタッフ交えて、懇親会を行いました。

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女性プロデューサーの皆さんのパワフルな人柄に圧倒されながら、皆さんの話にぐいぐい引き込まれ、あっという間のひと時でした。

会場の参加者一人一人が、これからの時代に必要なプロデュース力とは何か、そのために自分は何が出来るのか、何がしたいのか、真剣に考えるきっかけ作りが出来たのではないか、と感じています。

そして、今回の重要テーマの一つは「女性」でしたが、いずれは、「女性」「若者」「障害者」といった特定の属性で括って語らなくても良い社会が来れば良いなと感じました。

★春蘭の里×宇野常寛×山菜アドバイザー×プロボノnpo★ 地方創生交流会「山菜の、知られざる魅力」 レポート

3月24日に開催された、地方創生交流会「山菜の、知られざる魅力」についてのレポートです。

(遅くなりました)

~はじめに~

2018年3月24日(土)、NPO法人ZESDAは、東京都墨田区にある都立公園にて、
 
 ★石川県能登の「春蘭の里」をプロデュースされた多田喜一郎さん

 ★批評家としてご活躍され、批評誌『PLANETS』編集長でもある宇野常寛さん

 ★「マツコの知らない世界」等に、ご出演の山菜アドバイザー荻田毅さん

がコラボレートした地方創生交流会「山菜の、知られざる魅力」を開催しました。

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~内容~

当日プログラム
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 傍から見ると、このコラボレートは「???」となりますが、
 キーワードは”地方創生””体験”

 目的は大きく、①「春蘭の里」を知ってもらうこと、②同地を題材に地方創生について理解を深め合うこと、の2点です。

 異なる分野のエキスパートから意見を収集することで、地方創生の例示や資源の提示だけではなく、創生のための抜本的な「切り口」を考える「場」を創造できると考えました。

大まかなイベントの流れとしては

①イベントの開催経緯・趣旨を説明
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②地方創生の実施者多田喜一郎さんより、「春蘭の里」の紹介
 ⇒石川県能登の「春蘭の里」を通して、成功した”地方創生”の紹介。
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③山菜の専門家荻田毅さんより、山菜の魅力を紹介。
 ⇒地方資源の例示を行うべく、どこにでもある山菜の楽しみ方を説明。
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④ライフスタイル等に幅広い知見を有するPLANETS編集長の宇野常寛さんが登壇し、斬新な切り口での意見を投入。
 ⇒山菜を食し”体験”しながら、”地方創生”の可能性を探る。
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・・・このような構成で、都内ではなかなかできない”体験型”地方創生交流会となりました。

~ZESDAと春蘭の里~
ここで、イベントの経緯を説明すると、

1年ほど前にZESDAスタッフが春蘭の里に訪問し、春蘭の里実行委員会を立ち上げた多田喜一郎さんの想いに感化される形で、「春蘭の里」の支援活動を実施することになりました。

その後、ZESDAは、毎週1回(平日夜)のペースで有志のメンバー(約10人)がMTGを実施。
能登から600km以上離れた、都内某所でのMTG風景 )
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活動の一環をご紹介すると

国立図書館にて、春蘭の里に自生する山菜の栄養調査
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●春蘭の里の英語版サイトの作成 ※リンク先参照
春蘭の里
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●実際に訪問  ※今年も予定しております。
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このような活動をとおして、ZESDAは「春蘭の里」との関りを深めておりました。

ZESDAはパラレルキャリアを尊重し、多様なバックグラウンドを持つ方々が自発的に行動を起こす場です。
皆、熱量が高く本気ですので、ミーティングにおいて、意見のぶつかり合いなども、もちろんありましたが

結果
 『実際に見た「春蘭の里」をアピール・体験させたい』
 『「春蘭の里」の様な地方創生のかたちは他の場所にも適用できるのでは』
とメンバー間で意見が一致し、今回のイベントを企画する運びとなりました。

また、強調したいポイントとして

今回イベントで出された山菜料理‥‥
多田さんよりすべてご厚意で、ご提供いただきました。
今回のイベントの趣旨に共感頂き、イベント前日の深夜に、新鮮な山菜をお供に、石川県奥能登から車で出発して頂いたのでした。
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多田さんの全面協力のおかげで今回のイベントは成り立りました。
本当にありがとうございます。

~イベントの雰囲気とメディアの反応~
イベントの雰囲気は
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全員笑顔!

頂いた感想をご紹介すると

 「モノ→コトを体現したようなイベント。すごく良かったです。」
 「 最高でした!おひとりおひとりの個性とお話の広さが良かった。」
 「山菜の説明を一つ一つ受けながら味わえて良かった。」

皆さん山菜を”体験”することで、パネルディスカッションをとおして”地方創生”と春蘭の里について知見を深めて頂けたと思います。山菜料理は全員大好評でした!!!

また、メディアでも大きく取り上げて頂きました。

宇野常寛さん編集長を勤める『PLANETS』より今回イベントの記事 
 (イベントの詳細はこちらにて非常に分かりやすくまとまっています)
ch.nicovideo.jp
 
●PLANETS YouTubeチャンネル ※冒頭~15:00まで
宇野さんより当イベントの感想(ぶっちゃけトークも(笑))
www.youtube.com

●石川県に本社を置く、北國新聞 ※一部
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・・・Twitter 上でも反響頂いております。(「山菜の知られざる魅力」で検索ください)

~さいごに~
以上、長くなりましたが、当日の雰囲気、メディアの反響も良く、イベントは大成功に終わりました。

パネルディスカッションの最中に出たキーワードにオウンドメディアがありました。
IT等の発達により、容易に自己発信できる昨今。どれだけ発信力を高められるかが、地方創生の肝になるということです。
今回のイベントも、春蘭の里を積極発信してくださるインフルエンサーが多く集ってくださり、メディアにも取り上げて頂きました。
まさに我々の狙いが成就したと考えています。

最後で恐縮ですが、今回のイベントは

 「春蘭の里」の多田喜一郎さん
 「『PLANETS』編集長」の宇野常寛さん
 「山菜アドバイザー」の荻田毅さん

をはじめ、参加者各位から多大な協力を頂いたことでイベントが成功に導かれました。
大変ありがとうございました。

今後も、ZESDA全体で「春蘭の里」をサポートしていく予定です。
今回のイベントで至らぬ点もあったと思います。改善点も振り返りながら、前進する所存でございます。

読者の皆様におかれましても、次のイベント開催時に、ぜひご来場くださいませ。
そして、こんな活動をしてみたい!と思った方、ぜひZESDAにスタッフとしてのご応募やご支援をお待ちしております!

女性プロデューサー集結!イノベーションを語る!シンポジウム 5/12(土)@お茶ノ水女子大学のご案内②

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 いつもは裏方で活躍されている女性プロデューサーが、表舞台に集結します!

 女性が社会の中で働くにはまだまだ様々な課題が多い中、自ら道を切り開き活躍している女性プロデューサーが日本にはたくさん存在します!困難や課題に打ち勝つ強い精神力をもち(人間力)女性ならではの柔軟で現実的なアイデア(創造力)で問題を解決してこられた実践的なお話を一度に聞けるチャンスです!

 イノベーションに必要な「人間力」と「創造力」。両方を兼ね備えた女性プロデューサーから、男性も、そしてこれから社会に出る学生の方も(学生は参加費無料!)ぜひ、新たな気づきを得て頂ければと思います。

 皆様のご参加を心よりお待ちしております!」


【開催概要】

●日時:5/12(土)13:00〜17:30(同会場にて懇親会17:45~18:15)
●場所:お茶ノ水女子大学本館3階306号室(文京区)
●お申込み(事前登録)・詳細 ⇒ https://producer-symp.peatix.com/

●プログラム(プログラムの内容は変更する場合がございます。予めご了承ください。)
◎12:45 開場・受付開始 
◎13:00 開会挨拶  研究・イノベーション学会プロデュース研究分科会主査 久野美和子氏
共同開催・会場校挨拶 お茶の水女子大学 理事・副学長 森田 育男 氏

【第1部】 基調講演
◎13:10~13:30基調講演1【東北大学名誉教授 原山優子氏】
内閣府の総合科学技術・イノベーション会議議員としてsociety5.0の作成に携われたご経験等を踏まえ、リーダーに要求される能力や、未来の社会をデザインする必要性、そのために必要なアクションとは、などについてご自身のお考えをお話し頂きます。

◎13:35~13:45基調講演2【総務省情報流通行政局長 山田真貴子氏】
ICTは、地域にどのような貢献をもたらすのか。地域のICTによる課題解決事例を通じ、ICTを活用して地域が抱える課題をどのように解決に導いたのか、そして、ICTが描く可能性についてお話し頂きます。

【第2部】14:00~16:00活動報告&質疑応答「女性プロデューサーがイノベーションを起こす!」

NPO法人ZESDA カレッジ部門長 清水章代氏】
ご自身が参加するNPO法人ZESDAやプロデュース研究分科会の活動の元となっている「プロデューサー」や「プロデューサーシップ」の概要説明、それらの活動により得た出会いや気づきを幾重にも積み重ねた結果、形となったプロジェクトの紹介、そして今、求められているプロデューサー人材を育成する場についてお話し頂きます。

【社会的養護退所後ガイドブック作成委員会ゆでたまご代表 阿部 華奈絵氏】
高校3年間を児童養護施設で過ごした阿部氏は、様々な困難を乗り越え、「ゆでたまご」という有志団体を立ち上げました。児童養護施設の子供達に夢と将来の選択肢を提供する「ゆでたまご」での活動についてお話し頂きます。

国際医療福祉大学大学院 教授 石井美恵子氏】
東日本大震災被災地での、前例のない福祉避難所の開設支援を災害医療のスペシャリストとして、チーム医療・多職種連携を力強くスピーディーにリードした経験から、プロデューサーとしてのあるべき姿や想いをお話し頂きます。

【株式会社コスモピア代表取締役 田子みどり氏】
男女雇用機会均等法が制定される以前、女子大学生の時に起業され、女性が活躍できる環境を切り拓いてこられた田子氏。様々なご経験談を「多様な立場とネットワークを活かしてスキマを埋める」をテーマにお話し頂きます。

【横浜コミュニティデザイン・ラボ理事 宮島 真希子 氏】
新聞記者を経て、NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボで活動を行っている宮島氏は、価値ある地域資源について常にリサーチし、新たなつながりの創出に取り組んでいる経験をもとに、今回は答えのない事態に耐える能力(ネイティブケイパビリティ)についてお話し頂きます。


【第3部】16:15~17:30特別対談「2020東京オリパラに向けたプロデューサーとは」
【1998長野冬季五輪IOCリエゾン 麻生菜穂美氏  NPO法人STAND代表理事 伊藤数子氏】
1998年長野オリンピックにおいて日本側のリエゾンを務められた麻生氏。競技としてのパラスポーツの面白さを世界へ発信することを通じ、すべての人が自分の力を発揮し、お互いを認め合うことの大切さを伝えている伊藤氏。対談を通じて、2020年の東京オリパラで求められるプロデューサーの姿について、お二人のお考えをお話し頂きます。

◎17:30 閉会挨拶  研究・イノベーション学会プロデュース研究分科会主査/NPO法人ZESDA理事長 桜庭大輔氏


【第4部】◎17:30終了後、同会場で懇親会開催 (18:15まで)
(会費:シンポジウム参加費に含まれます。飲み物のみ・アルコールなし)


主催:研究・イノベーション学会「既存知識の新結合によるイノベーションでの地域活性化」サブ分科会、
同学会 プロデュース研究分科会、NPO法人ZESDA、一般社団法人 映像情報メディア学会(ITE)  
アントレプレナーエンジニアリング研究委員会
共催・会場提供:お茶の水女子大学
後援:総務省関東総合通信局一般社団法人 電子情報通信学会、日本技術士会、
一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)、日本ベンチャー学会
KANSAI@CANフォーラム、公益社団法人スマート観光推進機構、
モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)、日本女性技術者フォーラム
協力:(株)地域・技術経営総合研究所、(株)多夢
実行委員長:
(株)地域・技術経営総合研究所 代表社員 兼 所長、
一般社団法人 映像情報メディア学会 アントレプレナーエンジニアリング研究委員会 元幹事長、
研究・イノベーション学会 評議員、元業務理事、
同 既存知識の新結合によるイノベーションでの地域活性化サブ研究会 主査、
KANSAI@CANフォーラムWEBマスター、
一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会元技術企画部長、
日本ベンチャー学会 イノベーション研究部会 元幹事
中原 新太郎 http://s-nakahara.com/

以上

5月12日(土)13:00~@お茶の水女子大学「ICTとプロデューサーシップ」シンポジウムのご案内

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イノベーションに資するICTとプロデューサーシップによる地方創生・地域の課題解決

~日本屈指の敏腕女性プロデューサー10人から学び語らう午後~
貴方が目指すプロデューサーのタイプはどの方ですか?

学会、NPO,業界団体、総務省等の産官学民連携シンポジウムです。

趣旨:人口減少社会に突入した日本において今や地方の中核都市ですら疲弊しつつあり、地域創生が政策にもなっている。その各分野・場所でプロデューサー機能が必要ですが、供給が十分ではないため、調査研究と普及啓蒙、人材育成を推進しています。
現代ではICTの活用で効果を高めることができる可能性があるため映像情報メディア学会、研究・イノベーション学会、ZESDA等産官学民合同で開催することとしました。
今回のシンポジウムは「ICTとプロデューサーシップ」シリーズ第二弾ですが、昨年のシンポジウム参加者・団体からの強い要望により登壇者は総て女性で固めました。

日時:2018年5月12日(土)  13:00 ~ 18:00 (受付開始12:45~)

場所:お茶の水女子大学 Ochanomizu University (Official)
本館(有形文化財)3階306室
〒112-8610 東京都 文京区東京都文京区大塚2丁目1-1

●参加申込み:(Peatixより事前申し込み)⇒ https://producer-symp.peatix.com/

●参加費: (事前申し込み/5月11日まで受付)
〇一般参加 資料冊子付 ¥2,500
〇一般参加 資料ダウンロード権利付  ¥1,500
〇主催・協賛・後援団体会員 資料冊子付  ¥2,000
〇 主催・協賛・後援団体会員 資料ダウンロード権利付 ¥1,000
〇学生 資料ダウンロード権利付 無料
※事前お申込みなしの当日参加の方は一律3000円(資料冊子付)となります。
予めご了承ください。


プログラム(予定):
13:00 開会挨拶 
研究・イノベーション学会 プロデュース研究分科会 主査 久野 美和子 氏
共同開催・会場校挨拶 お茶の水女子大学 理事・副学長 森田 育男 氏

司会 NPO法人ZESDA 清水 章代 氏

【第1部】
13:05~13:30 基調講演1:前 総合科学技術・イノベーション会議議員 原山 優子 氏

13:30~13:50 基調講演2:総務省 情報流通行政局長 山田 真貴子 氏

【第2部】
14:00~16:00
講演・パネルディスカッション「地域の課題解決とプロデューサーシップ」

社会的養護退所後ガイドブック作成委員会 ゆでたまご代表阿部 華奈絵 氏
(情報弱者になり社会弱者になる危険性が高い児童養護施設出身者に情報提供、ご自身も児童養護施設出身者)

国際医療福祉大学大学院 災害医療領域教授 石井 美恵子 氏
(スマトラ島沖、四川等の海外も 含め被災地支援、東日本大震災だけで延べ3770名の看護師を派遣) 

NPO法人ZESDA カレッジ部門長 清水 章代 氏
(研究・イノベーション学会 プロデュース研究分科会 幹事。北陸先端科学技術大学院大学JAIST)にてプロデューサー、プロデューサーシップについて研究中。管理栄養士。)

東京ニュービジネス協議会 特別理事(元副会長)/NPO法人ふるさと山口経営者フォーラム 常務理事事務局長/コスモピア 代表取締役 田子 みどり 氏
(東京起点の地域活性化、元祖女子大生起業家)

横浜コミュニティデザイン・ラボ理事/元神奈川新聞記者 宮島 真希子 氏

【第3部】
16:15~17:30特別対談 「2020東京オリパラに向けたプロデューサーとは」
1998長野冬季五輪IOCリエゾン 麻生 菜穂美 氏
パラスポーツ支援NPO STAND 理事長 伊藤 数子 氏

【第4部】
17:30終了予定、1時間弱懇親の時間を設ける予定

※プログラムの内容は当日変更となる場合がございます。予めご了承ください。

主催: 研究・イノベーション学会「既存知識の新結合によるイノベーションでの地域活性化」サブ分科会、
同学会 プロデュース研究分科会、NPO法人ZESDA(日本経済システムデザイン研究会)
一般社団法人 映像情報メディア学会(ITE) アントレプレナーエンジニアリング研究委員会
共催・会場提供:お茶の水女子大学
後援:総務省関東総合通信局一般社団法人 電子情報通信学会、
日本技術士会、一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)、日本ベンチャー学会、KANSAI@CANフォーラム、
公益社団法人スマート観光推進機構、モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)、日本女性技術者フォーラム
協力:(株)地域・技術経営総合研究所、(株)多夢
実行委員長という名の雑用全般:(株)地域・技術経営総合研究所 代表社員 兼 所長、
一般社団法人 映像情報メディア学会 アントレプレナーエンジニアリング研究委員会 元幹事長、
研究・イノベーション学会 評議員、元業務理事、同 既存知識の新結合によるイノベーションでの地域活性化
サブ研究会 主査、KANSAI@CANフォーラムWEBマスター、一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会元技術企画部長、
日本ベンチャー学会 イノベーション研究部会 元幹事
中原 新太郎 http://s-nakahara.com/

第7回プロデュース研究講座「イノベーションを加速するプロデューサー」報告

ブログへのアップが大変おそくなってしまいましたが、先日行われました上記研究会につき簡単に内容について纏めました。

全体にわたり示唆に富むご講演でした。講演いただきました先生方に改めて感謝申し上げます。

ご参照をいただければ幸いです。
よろしくお願いします。

【開催概要】
日時:平成29年9月28日(木)18:00から20:30
場所:政策研究大学院大学
主催:研究・イノベーション学会プロデュース研究分科会

講師:
・福野泰介氏(jig.jp代表取締役
・安田耕平氏(キャンパスクリエイト社長)
・須藤慎氏(キャンパスクリエイト技術移転部マネージャー)          
     
1.前半:「データシティ鯖江から始まったウェブ新時代」
福野泰介氏(jig.jp代表取締役)のお話

福野さんは、jig.jp代表取締役のかたわらNPO、ボランティアなど様々な活動をされています。本ブログではご講演の内容について筆者が印象に残った項目につき一部分ではありますが報告をさせていただきます。

福野さんは、現在、オープンデータ伝道師※1として活躍されています。

※1:内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室は、オープンデータ利活用を通じての社会課題解決に積極的に取り組み、実績を残した8名を「オープンデータ伝道師」に任命しています。(『オープンデータの伝道師が考える次の一手。重視しているデータの「濃度」』 記事より引用)
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オープンデータ伝道師の福野さんは何故、オープンデータ※2の普及促進に強い関心を持っているのでしょうか。未来のwebの世界について思いを巡らせていたある機会にweb開発者として伝説の人、ティム・バーナーズ=リー氏に実際にお会いされ、この時に氏からオープンデータ(自由に使えるweb上のデータ)について話しを聞いたことがキッカケとのことです。(wikiで氏の情報を調べて、早速、海外まで飛んだ、とのことでした。行動力が素晴らしい!!)

※2:オープンデータは、行政機関がもつ公共データや、交通機関などの公的企業のデータを、著作権や特許などの規制を受けずに誰でも自由に利用できる形で、自らホームページなどで公開する動き。情報を分析・加工することで、新しい行政サービスやビジネスにつながると期待されている。(2013-12-19 朝日新聞 朝刊 1経済 より引用)
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オープンデータ化を普及促進させることによって、誰でもオープンデータを有効活用することが可能となります。

例えば、アプリと連携させることにより、地域防災マップや市町村の人口予測、様々な活用が考えられます。

また、アプリとIoT※3、オープンデータとの連携により、リアルタイムの交通混雑情報の配信など、さらに新しい可能性、用途は広がります。

※3:モノのインターネット(英語: Internet of Things, IoT)とは、様々な「モノ(物)」がインターネットに接続され(単に繋がるだけではなく、モノがインターネットのように繋がる)、情報交換することにより相互に制御する仕組みである。それによる社会の実現も指す。(wiki より引用)

福野さんは、一方で、イチゴジャム(IchigoJam※4を使ったプログラミングの教育、普及活動にも取り組まれています。

※4:IchigoJamとは手のひらにのせられる大きさの、プログラミング専用こどもパソコンです。IchigoJamにテレビとキーボードをつなげば、すぐにプログラミングを始められます。(IchigoJam HPより引用)

イチゴジャムは、価格は100円(非常に安価!!)ながらCPUのクロック数は2秒で1億回という優れた性能を有する手のひらサイズで、プログラムを走らせることの出来るちょっとした小型パソコンのようなものです。

イチゴジャムの子供向け教室(3年前から福野さんが主催。「すべての子供たちにプログラミングを」の理念のもと開講。イチゴを卒業した子供たちはリンゴ?!に移行する。)では、小学生からシニアまで幅広い年齢の方々がプログラミングを学び、実際にイチゴジャムで自作プログラムによるユニークな試みに挑戦しています。特に、小・中学生などは、実際にイチョゴジャムで走るゲームを自分の手で作りたいという強いモチベーションがあります。

自作プログラムを組み込んだイチゴジャムとIoTと連携させたイノシシ撃退システムを開発して、イノシシ被害から畑を守っている、というシニア(イチゴジャム子供向け教室の受講生)もいて大変話題になっています。

また、イチゴジャムと市バスの乗降客数の情報に関するオープンデータ、IoTと連携させたリアルタイムの交通混雑情報のためのシステムを開発した女子高生なども現れました。

福野さんは、イノベーションという言葉は、一般的には「技術革新」という意味にとられているが、それは大いなる誤解であることに気づいたそうです。

イノベーションの真の意味は、「価値を創造して社会を変革すること」であると。

また、このようなユニークなオープンデータの活用事例が福井県鯖江市という地方から出てきたこと、とても大きな意味があります。

福野さんは、「こらからの日本活性化の要は、作る(創る)ことであり、それは多品種少量生産の形態を取る。IoTとwebによる波がその成否を決める。それだからこそ中小企業、個人にこそチャンスがあり、また、中央、地方の差別のない世界ゆえにむしろ、地方にこそチャンスがある」と強調されました。

そして、イノベーションを「おもてなしのようにする力」がきっと日本にはあるので全世代で面白いことをしていきましょう、と述べ講演を締めくくられました。

【参考URL】
ⅰ.IchigoJam HP
https://ichigojam.net/about.html

ⅱ.「福野泰介の1日一創」:福野さんのブログ。
http://fukuno.jig.jp/

ⅲ.オープンデータ・カタログサイト
http://www.data.go.jp/?lang=japanese

ⅳ.ティム・バーナーズ=リーのTEDでのプレゼン
https://www.ted.com/talks/tim_berners_lee_on_the_next_web?language=ja


2.後半「広域TLOキャンパスクリエイトにおけるプロデューサーの役割」
安田耕平氏(キャンパスクリエイト社長)
須藤慎氏(キャンパスクリエイト技術移転部マネージャー)のお話

(以下ではキャンパスクリエイト社のお話をそのまま、本ブログ筆者なりに要約し掲載させていただききました。)

キャンパスクリエイト(以下、KC社)は、今から18年まえに設立された主に産学連携をコーディネートする会社です。
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TLO(産学連携支援機関、技術移転機関)※1は、ほとんどが大学の内部にありますが、KC社は大学の外部にある数少ない株式会社です。株主は全て個人により構成されています。大学、国などの公的機関からは完全に独立した民間会社です。

※1:TLOとは、Technology Licensing Organization(技術移転機関)の略称です。大学の研究者の研究成果を特許化し、それを企業へ技術移転する法人であり、産と学の「仲介役」の役割を果たす組織です。大学発の新規産業を生み出し、それにより得られた収益の一部を研究者に戻すことにより研究資金を生み出し、大学の研究の更なる活性化をもたらすという「知的創造サイクル」の原動力として産学連携の中核をなす組織です。(経済産業省HPより引用)

大学と企業を結びつけオープンイノベーション※2を実現することをミッションに活動しています。

※2:オープンイノベーション(英: open innovation)とは、自社だけでなく他社や大学、地方自治体、社会起業家など異業種、異分野が持つ技術やアイデア、サービス、ノウハウ、データ、知識などを組み合わせ、革新的なビジネスモデル、研究成果、製品開発、サービス開発、組織改革、行政改革地域活性化、ソーシャルイノベーション等につなげるイノベーションの方法論である。
wikiより引用)

(1)大学・企業・産学連携機関(KC社など)の3者契約で大切なこと。
KC社の600件に渡るこれまでの産学連携サポートの実績から、これが成功する確率はせいぜい3割程度と見込んでおり、また期間も数年以上かかります。

KC社は、実際のところ産学連携においては、企業と大学が共同研究を行う際の研究成果の有無に対する責任について、大学の考え方に大いに問題がある、と考えています。共同契約を締結する際、契約書には「研究成果が達成されない場合は、大学・企業双方に責任がある」旨の条項を入れますが、これはいわば「共同責任」という形のものであり、大学に明確に責任がある形にはなっていません(本音では、大学側に責任は無いという形)。このように、双方の責任、特に結果に対する大学側の責任を曖昧化する傾向があり、大学に対する企業の信用が得られず産学連携が上手く行かない大きな原因の一つになっています。

産学連携を成功させるためには、企業と大学との信頼関係を如何に構築していくのか、が重要な鍵であると考えています。その意味で、それら双方を結びつける産学連携コーディネータの個人としての力量、および役割が非常に重要な点であると認識しています。
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(2)KC社の経営戦略
KC社は、全国の大学に数多く散らばるシーズを必要とする企業に結びつけオープンイノベーションを実現することを使命に活動しています。

そのためにKC社の強みである全国の大学などとの幅広いネットワークと、コーディネータの共同研究に対する支援力、スタッフの優れた提案力などをフル活用しています。また、関東圏における知名度などのブランド力も強みです。

産学連携の分野での事業環境から、KC社の優れたwebマーケティング力なども強みです。特に、TLOとしての利点を多いに活用できることは強みです(関係機関とのリンクが張りやすいなど)。有効なWebマーケティングの一例としてオープンイノベーションに関する記事の掲載を頻繁に行い注目度のアップを図っています。

また、斯界では数少ない株式会社であること(独立度が高いこと)も、産学連携サポート事業への自由度の高さという意味で強みとなっています。

また、フリーランスの社外専門家の活用も積極的に行っています。

(3)オープンイノベーションをコーディネートする上で大切なこと。
産学連携サポートにおいて最も重要なことは、コーディネータの質を維持することである、と考えています。KC社には正規雇用の女性が数多く働いており、働きやすい環境も整えています。マネジメントの仕組みづくりなど、十分に考慮しながら戦略的に取り組んでいます。

オープイノベーション実現に向けたサービスの質の向上にも取り組んでいます。
取引コストの削減、ゼロベースから新しい企画提案などにも重点的に取り組んでいます。共同研究のマネジメント力、大学、企業などの顧客へのリピート力のアップを目指しています。

また、何よりもコーディネータをはじめとしたスタッフの「伝える力」を如何に高めていけるのかが、大学と企業を結びつけるためには重要な点であると認識しています。

企業に対してですが、特に産学連携に意欲が高い相手にアプローチすることが、技術移転、共同研究を増やすことにおいて大切である、と考えています。

(4)今後、強化すべきこと
シーズ調査においは、今までは、勘と経験に頼っていましたが、AIなどの最先端のIT技術を積極的に活用し、膨大なデータからより効率的に有効なシーズを見つけ出すことに取り組んでいきたいです。

(5)KC社の成長のために
特に、欧米企業の実例などにあるように、スタートアップで急成長を実現した企業について関心があります。今後は、経営面で成長曲線が高いモデルを選択することについても研究していきたいです。

【参考URL】
ⅰ.株式会社キャンパスクリエイト HP
http://www.campuscreate.com

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3.全体についての質疑
ご講演の後、桜庭主査の司会で、活発な質疑が行われました。

・質問1:
キャンパスクリエイト社は、大学からの出向者などを受け入れた経験などがあるか。

・質問1に対する回答:
大学からの出向者なども受け入れた経験はあるが、あまり上手くいかない。理由は、業務に対して積極的に成果を出して行こうというモチベーション面や、民間企業の職員として、一定期間内で個人の業績のアウトプットを出ださなければならないという危機感をシビアに持てるかどうかの面である。
大学からの出向者の場合、給与の面では出向元である大学が保証しており、出向先で是が非でも成果をださねばならないという危機感や、それとも関連するかもしれないが業務への取り組みに関するモチベーションの面で、どうしても足りない部分あると痛切に感じる。
しかし、地方大学からの出向者で上手くいった例はあった。ただ、やはり大学自体が持つ体質は難しい部分も多々あり、大学事務局自体の様々な規制、保守性など越えなければいけないという主に組織体質に関する課題などもかえって浮き彫りになってきている。

・質問2:
TLOにおけるwebマーケティングは、ことごとく失敗している、という感想を持っている。これについてのKC社における独自工夫などは何かあるのか。

・質問2に対する回答:
webマーケティングの手法などについては、業界ではだいたい確立されていると思う。やはりシステム面での強化や効率性の更なる追求が改善すべきポイントであるように考える。また、シーズの技術説明をより分かりやすく説明する工夫を凝らすことが重要である。それにより問合せ件数も多くなるとの感触がある。

・質問3:
TLOについて問題なのは、企業が金を出すことに対しての納得感の有無に尽きると考えているが、それを解決する有効な手段として産学連携における研究開発の作業工数の効率化が考えられると思うが、それについてはどのように考えるのか。

・質問3に対する回答:
KC社としては、やはり必ず掛かってくるコストについては企業に対してはしっかりとした事前の説明をしなければならない。これに対して予算化することについて可能であり、かつ産学連携に対してモチベーションが高い企業をしっかりと選択していくことが重要である、と考えている。特に金額面などでの条件は事前に大学、企業、KC社などが3者でシビアな意味で充分に納得した形でなければこの事業は成功しない、と確信している。

・質問4:
私(質問者)は、スクールボランティアに取り組んでいるが、福野さんが実際に開催したイチゴジャムの教室などは、どのような形で行ったのか。

・質問4に対する回答:
鯖江市の学校でクラブ活動としてプログラミング教室を行った。はじめは1校だけだったが、次第に増えていき10校までになった。私(福野さん)自身もボランティアとして参加した。
また、ふるさと教室という形で東京などにいる人が自分の故郷で展開しても面白いと思う。自身の体験などのお話なども含めたプログラミング教室をやるのも地方の魅力発信に繋がっていくと思う。

・質問5:
双方への質問。ライバルはいるのか?

・質問5への回答:
ライバルはイギリス。(福野さん)
イギリスにはラズベリーパイがある。イギリス人がやっている。このデバイスは2,000万円で販売できている。イチゴジャムもそれぐらいの価値ある物として発展していってほしい。
あと、鯖江市のライバルはイギリスと言うとカッコイイと思った!!

KC社はTLOの分野でコンサルで勝負する日本で唯一の会社なのでライバルはいない、と自負している。実際のシーズの質と量に依存しないビジネスモデルである。民間の競合他社ともその点が異なっている。
また、欧米企業などでの創業のスタートアップで急成長している企業などにも経営上のヒントがある、と感じている。

KC社には、動画関連の技術について色々と教えを受けたい。(福野さん)

・質問6:
プロジェクトを実現するには、やはり市長のツルの一声が大切なのでは。(福野さんへの質問)

・質問6への回答:
地方の市役所などでも変化に対するモチベーションが高い職員が多いところがある。それの有無がプロジェクトの実現には何よりも大切。
都会に住む人に対しても東京だけではなく地方に帰っても楽しい人生がある、と強く言いたい。

・質問7:
TLOであるKC社が株式会社であることの意味は何か。

・質問7への回答:
株主に対しての説明責任。将来への見通しを含めた説明が必須。

・質問8:
KC社が考えるニーズとシーズを繋げることで重要なことは何か。

・質問8への回答:
そのニーズがある業界に焦点を絞って戦略的に取り組むこと。

・質問9:
福野さんが会社経営において大きなお金が必要である、と考えている項目は何か。

・質問9への回答:
やはり広告費だと思う。これについては追加投資も含めてしっかりとやっていきたい。


4.結び
前半、後半とそれぞれ性格の異なる2つケースについてのご講演を通じた本ブログ筆者の感想は以下です。
  
前半の福野さんのお話は、地方の魅力・発信力を如何に高めていくのかということで大変、示唆に富んでいました。福野さん自身の夢とロマン、ご自身の好きなもの、やりたいことへと素直に向かっていく勇気、エネルギーと行動力が、独創的なイノベーションへの推進力になっていることが良く分かりました。

キャンパスクリエイト社のお話では、TLO(産学連携支援機関)を民間企業として経営することの難しさや、一方でのやり甲斐の大きさについて一部ではありますが理解できました。また、難しい領域で企業体として逞しく生き残っていくために創意工夫、努力を惜しまずに実行していくことが如何に大切であるのかを教えていただきました。

双方のお話で共通することは、役所、大学、企業などの既存の大きな組織、個人などを如何に動かしていくのかということに苦心されています。そして、それら組織、個人との高いレベルでのモチベーションの共有と協力関係を築いていくためには具体的な戦術も含めたしっかりとした戦略を持って取り組まなければならないことを改めて認識出来ました。

今更当たり前のことではありますが、事業や取り組みに参加する企業、大学、役所、個人などのステークホルダー相互でのwin-winの関係を物心両面で巧みに構築し、それに向けて有効な施策を愚直に実行していくことが成功の秘訣である、強く思いました。

【参考】
ⅰ.「産学連携が成功するための条件とは何か 〜イノベーションと企業家(アントレプレナー)、その可能性の中心〜」(ZESDA ブログ /2017/02/28)
http://zesda.hatenablog.com/entry/2017/02/28/225107

(講演内容の纏め記事・執筆担当:ZESDA 鬼丸康太郎)


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