ZESDA's blog

グローカルビジネスをプロデュースする、パラレルキャリア団体『NPO法人ZESDA』のブログです。

プロデューシング・システムを創ることで、日本経済の活性化を目指す、NPO法人ZESDAのブログです。


Mr. Dennis Chia(株式会社BOUNDLESS CEO)より「日本における国際化による地域活性化の可能性を探る」 Platform for International Policy Dialogue (PIPD) 第42回セミナー開催のご報告

NPO法人ZESDAは、「官民恊働ネットワークCrossover」(中央省庁の若手職員を中心とする異業種間ネットワーク)との共催、株式会社クリックネット まなび創生ラボ の協力により、在京の大使館、国際機関や外資系企業の職員、及び市民社会関係者をスピーカーに迎え、国内外の政治・経済・社会問題について英語での議論を通じて理解や問題意識を高める、「Platform for International Policy Dialogue (PIPD)」を開催しています。

 10月31日(火)午前7時30分より開催された第42回PIPDセミナーでは、株式会社BOUNDLESSのCEOを務め、外国人として日本の地方創生活動に取り組まれているDennis Chiaさんをお招きし、Exploring the Possibilities of Regional Revitalization Through Internationalization of Japan(日本の国際化による地域活性化の可能性を探る)についてお話頂きました。

 今回は、これまでデニスさんが外国人として日本の地方創生に取り組まれてきた経験を共有頂き、その経験の中で浮上してきた課題を参加者への「問い」として提示し、参加者同士によるインタラクティブなディスカッションが行われました。

 セミナー冒頭、デニスさんは現在の日本が抱える地域活性化に係る課題について言及され、「「少子高齢化」「人口減少」「東京一極集中」等多くの難問を解決するために、地域活性化の取組が活発になっています。しかし、こうした活動に参加する大半の人たちは日本人です。日本の全体人口が減少する中で、日本人のみで地域活性化を進めていても、地域間の取り合いに陥りかねません。」と問題提起をされました。

 次に、デニスさんは、日本で勉強している外国人留学生や日本を訪れる観光客の数が増加傾向であることを指摘されました。そして、「こうした機会を捉え、国際的な視野から地方の魅力と課題を再編成し、新しい切り口から日本の地域活性化に貢献することが出来ると考えている。」と強調されました。

 そこで、株式会社BOUDLESSの一事業として、外国人の視点を取り入れた日本の地域活性化のために活動している「地方創生パートナーズ」についてご紹介頂きました。「地方創生パートナーズ」は、地方創生やインバウンド観光の促進のために、外国人留学生や訪日外国人を地域の方とつなぎ、彼/彼女たちが活躍できるプラットフォームを構築するものです。その際に大事なことは、外国人をゲストとして扱うのではなく、積極的に事業に携わるパートナーとして協働することだと強調されました。
 これまでの活動事例について、①北海道 下川町、②福岡県 八女郡、③岩手県 遠野市、④北海道 浦幌町を挙げられました。お茶等の特産品や地元の教育制度、地域の生活文化や自然など、その地域特有の強みを生かすことが大切だそうです。これらの事例は比較的小規模な町ですが、日本の近未来における町作りのモデルとなり得るとのことです。なお各回の活動参加者はSNS等を通じて募集し、参加者の国籍は、アメリカ、中国、ベトナム、タイなど、多岐に亘っています。
 デニスさんは、「地方創生パートナーズの活動は、単なる観光旅行ではありません。ツーリズムは目的を達成するための手段であり、私たちの目的は、地域コミュニティーの中へ深く入り込み、地域の信頼を獲得し、地域活性化のための持続的なコミュニティーを形成することです。」と説明されました。

 デニスさんによるプレゼンテーションの終盤に、「地方創生パートナーズ」の具体的な活動フローについてご説明頂きました。
<ステップ1>~相互理解を深める~
 地方創生パートナーズが、活動対象地域の方々と交流を図り、その地域の文化や歴史、現在行われている取り組み、地域の理想像について学びます。同時に、地域の方々に地方創生パートナーズのビジョンや活動内容について紹介し、プロジェクトの趣旨を決めます。
<ステップ2>~多様な意見に触れる~
 地方創生パートナーズが、地域の行政や民間企業、住民等、より多様な方々と交流を図り、地域特有の文化や現時点での取り組みについて、多様な意見及び深い知識を身につけます。
<ステップ3>~新しいビジネスを創出する~
 地方創生パートナーズが、一定期間地域に滞在し、国際的な視点から地域の強みや課題を見つめ、地域活性化に繋がる新しいビジネスを創り出します。
<ステップ4>~世界へ情報発信する~
 以上のステップを経て、得た学びを海外に発信します。

 こうして、デニスさんが外国人として日本の地方創生に取り組まれてきた経験が会場に届けられました。そして、その活動を通じてデニスさんが感じた問題意識として、“What are the demerits of ‘regional revitalization’ through internationalization? What are the possible barriers faced by the local communities?”(国際化による「地域活性化」の欠点は何ですか?地域コミュニティーが直面する可能性のある障壁は何ですか?)という問いを提示して頂き、その解決策も含め、参加者同士のインタラクティブで活発な議論が行われました。
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 今回も会場提供にご協力頂いた、株式会社クリックネットまなび創生ラボの皆様に厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

「トーキョー会議2017」開催のご報告

2017年9月30日(土)、NPO法人ZESDAは、東京丸の内の3×3 Labo Futureにて、CISA(在日本留学生会協議会)、MSN(文科省奨学生ネットワーク)とともに、
日本で学ぶ外国人留学生を中心とした企画運営委員会を組織し、今年で三年目となる、日本最大級の留学生ディスカッションイベント「トーキョー会議2017」を共催いたしました。

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第一部のパネルディスカッションでは、以下の5名の登壇者の方々に「都市の未来」と題したプレゼンテーションと討論をしていただきました。

批評誌『PLANETS』編集長、評論家、宇野常寛氏。
東急電鉄執行役員、東浦亮典氏。
元AYNJ-アセアン・ユース・ネットワーク・ジャパン 会長、Nhu Quyhn Tran 氏。
Soseiパートナーズ創立者・株式会社BOUNDLESS代表取締役社長、Dennis Chia氏。
Tokyo Interlopers 共同創立者、Cory Baird氏。

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東浦氏は、東急電鉄二子玉川、渋谷など地域開発の取り組みの歴史を紹介しながら、今後の東京の都市構想について述べられました。宇野氏も、多摩県創設など、独創的なアイデアを聴衆に問いながら、東京の社会生活構造の変化と未来の姿について刺激的な発案をしてくださいました。質疑応答も、バックグラウンドの違う多数の参加者から、それぞれの体験談を交えて活発な質問が寄せられ、パネリストとの間に舌鋒鋭いやりとりが見られました。

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第二部のグループディスカッションでは、日本人ビジネスマンと外国人留学生をバランスよく交えた小グループに分かれ、少人数ディスカッションを行いました。参加者は、申込時の本人の希望に沿って、日本語で議論するグループ、英語で議論するグループに振り分けられました。

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それぞれのグループは、①外国人向け住宅市場、②コミュニティの場の創生、③日本の人材採用の慣習のうちから一つのトピックを選び、「都市の国際化」について議論しました。議論の後は、それぞれのグループで話し合われたことをグループ間で共有しました。議論の成果は報告書にまとめて公表し、都にも提出する予定です。

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第三部では、立食形式の懇親会を行いました。第一部、第二部で話し合われた議論を新しく知り合ったもの同士でさらに深めたり、就職活動に興味のある留学生と、様々な日本企業のビジネスマンの間で情報交換が行われたり、ネットワーキングの素晴らしい場を提供できました。

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東京には、世界181か国・地域の大使館・代表機関等が集い、150か国以上からの留学生が学んでいます。
日本から母国へ世界へと飛び立っていく優秀な若者たちとのネットワークは、日本と東京のソフトパワーそのものであると我々は考えます。

これからも、NPO法人ZESDAは、CISA、MSNと協働して「トーキョー会議」をプロデュースすることを通じて、外国人留学生らが日本の社会人と自由闊達に交流・議論できる場を提供するなど、彼らの拠点的役割、ハブ的機能を担って参ります。

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Facebookにその他の写真を掲載しています。是非ご覧下さい。
https://www.facebook.com/pg/zesda.since2012/photos/?tab=album&album_id=1364608460331987

第3回ZESDA交流会「プロデューサーシップで切り拓け!」のご案内

第3回ZESDA交流会「プロデューサーシップで切り拓け!」
日時:2017年11月4日(土)13:00-17:00(開場12:45)

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【企画趣旨】

「望む社会を目指して具体的なミッションを持ち、そのミッションを実現するため、必要な人材と連携・融合しつつ、現状の課題から出発し、実現していく手法を備えたプロデュース人材」そんなプロデューサーシップを持つ人がイノベーションを引き起こす重要な鍵だと主張し、活動してきたNPO法人ZESDAは、今年5周年を迎えます。その節目として第3回ZESDA交流会を開催します。

交流会では、ZESDAに関わりのある講演者のお二人に、プロデューサーシップで課題に立ち向かい、新たな価値を生み出し、道を切り拓き、様々な事を実践されてきたお話しや、ZESDA活動報告、交流タイムなど内容盛り沢山です!
5年で広がってきたコネの輪の確認等をし、さらなるイノベーションへと繋がるような交流会にしたいと思っています。
1つ1つは小さく見えることでも、波紋はどんどん広がり、裾野は大きくなっていきます。

ここでの出会いが、何かを変えたり気づきのきっかけになるかもしれません。

ZESDAってなんだ?と興味を持った方も、今まで関わってくださった方も、ぜひお気軽にご参加ください。


第1部 講演会 

講演①「地方創生・地域を輝かせるプロデューサーの役割~人口減少の真の解決策とは?~」

 ・川上村副村長(地方創生担当)兼 政策調整室長  西尾友宏氏

まちづくりでも注目を浴びるようになった長野県川上村の仕掛け人である西尾氏よりお話を伺います


2017年9月ZESDAがスタッフが川上村を訪問しました!
zesda.hatenablog.com



講演②「アジアの懸け橋 SAKURA COLLECTION 6年の軌跡 」

•株式会社Adventure JAPAN 代表取締役
•SAKURA COLLECTIONプロデューサー   田畑則子氏

日本とアジアの文化を繋げたい!とアジア各国でファッションショーを行っているSAKURA COLLECTIONプロデューサーの田畑氏よりお話を伺います。

2017年3月横浜開催報告 (ZESDAもサポートさせていただきました!)
zesda.hatenablog.com



第2部 ZESDA活動報告

5年間ZESDAはどんな活動をしてきたのか、今後のZESDAの活動について、どんな人がスタッフとして活動しているのか等ご紹介させていただきます。



第3部 交流タイム

参加者の皆さん、講師の方も加わり交流会を行います。可能な限り、参加されている方の職業などをわかるようにして、興味ある方とお話できるようにスタッフもお手伝いする予定です。ZESDAスタッフ自身も様々な職業の人が集まっています。全く違う業界の方と話すのも刺激があって楽しいと思います。

※長野県川上村、SAKURA COLLECTION の協賛企業、団体なども募集しています!講演者のお二人と具体的なお話をされたい方はスタッフまでお声掛けください。(事前に情報をお寄せいただくとよりスムーズにお取次ぎができます。zesda.info@gmail.comまでご連絡ください)


第4部 懇親会

場所を変えて、懇親会を予定しています。話し足りない、もっと交流を深めたい!という方は是非、ご参加ください。




【開催概要】

日時:2017年11月4日(土)開場12:45  開始13:00 終了17:00
場所:日本経済大学大学院 246ホール( http://shibuya.jue.ac.jp/campuslife/facilities.html)
JR山手線・埼京線湘南新宿ライン 渋谷駅南改札西口徒歩3分
会費:社会人1,000円 学生500円
※参加者の条件や必要なスキルなどは特にございません。

参加申し込み(Peatix)⇒ http://peatix.com/event/311995/


<スケジュール>※内容は変更になる可能性がございます。予めご了承ください。

13:00〜 開会挨拶
13:15〜 第1部 講演会
川上村副村長(地方創生担当)兼 政策調整室長 西尾友宏氏
14:05〜 
株式会社Adventure JAPAN/SAKURA COLLECTIONプロデューサー 田畑則子氏       
15:00〜 第2部 ZESDA活動報告
インキュベーション部門・カレッジ部門
ZESDAスタッフアンケート結果報告
15:40〜 NPO法人ZESDA理事長挨拶
16:00~ 第3部 交流タイム
16:45~ 閉会挨拶

【懇親会】17:30~19:30
会費:約3500円
会場は決まり次第追記いたします。

※懇親会費は懇親会会場でお支払をお願いいたします。



【講師プロフィール】 

川上村副村長(地方創生担当)兼 政策調整室長 西尾友宏氏

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1985年 三重県生まれ 早稲田大学卒業。
2009年 農林水産省入省 食品安全行政分野の企画部門 家畜防疫、農薬・肥料取締等を経験。
東日本大震災発生後原発被害を受けた地域、産業の復興政策の立案と法制化に従事。
2015年4月より 地方創生人材支援制度第1期生として川上村に派遣。現職を勤める。



株式会社Adventure JAPAN 代表取締役
SAKURA COLLECTIONプロデューサー 田畑則子氏

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1971年(昭和46)年埼玉県生まれ。 短大児童教育学科卒業後、大手クレジットカード会社勤務の後、ワーキングホリデイにてオーストラリアに1年間滞在。
現地ツアーガイド、日本語教師などを経験。帰国後、出版社勤務などを経て1995年フリーライターとして独立。
旅と働く人(OL、サラリーマン)を主に得意テーマとし、週刊誌、月刊誌、単行本などに執筆参加。
1999年3月には、『がんばる人を応援します!』をキャッチコピーに、雑誌「AG~Adventure Girls~」を創刊し、編集プロダクション有限会社あぐ設立。
2008年 AJ Adventure JAPAN創刊
2009年 株式会社Adventure JAPAN設立
2012年よりSAKURA COLLECTIONをプロデュース。今年で6年目となる。マレーシア、シンガポール、タイ、ベトナム、日本などアジア各国で開催。
東京商工会議所会報「アジアの街角から」連載中。


以上


※「プロデューサーシップ®」はNPO法人ZESDAの登録商標です。

(お問い合わせ zesda.info@gmail.com

地方創生!長野県川上村をプロデュース! 全国的に注目を浴びる、その取組みとは?


(川上村の位置する信濃川上駅)

地方創生の注目舞台

新宿駅から電車を乗り継ぎ約3時間。都会の喧騒から離れて広大な自然と畑が私達を出迎えます。訪問先は、日本一のレタス生産地として名高い長野県南佐久郡川上村。この場所で、私達、NPO法人ZESDAの副代表理事、西尾友宏氏(川上村副村長 兼 政策調整室長)の取組みが地方創生の良好事例として全国的に注目を浴びています。約2年前に農林水産省から派遣された西尾氏は、川上村の現状と課題をどのように捉え、「プロデューサー」として手腕を発揮してきたのか。川上村のキーマンたちとの交流を通じて、地方創生の鍵を探ります。

・2年前の記事はこちら
・西尾氏の役職詳細はこちら

川上村が所在する信濃川上駅(JR東日本)に降り立った私達一行は、同氏からこれまでの取組みの説明を受けるため、村役場の講堂に移動します。

(講演する西尾氏)

女性のための村づくり

西尾氏が強調する地方創生のキーワードは「女性」です。

「人口減を解決するためには、女性にとって暮らしやすい村づくりをしなければならない」

川上村は、米軍向け食糧供給庫として、朝鮮戦争時に大きくレタスの生産量を伸ばしました。標高が高く、また、都市部から近い立地を強みに、多くの農家が誕生し、1農家あたりの平均年収は、2,500万円を超えて「奇跡の村」と呼ばれるに至りました。一方で、レタス栽培は男性の肉体労働に頼らざるを得ない側面が強く、時代の流れは女性を都市部へと流出させます。女性が減少するに伴い男性の未婚率は上昇し、人口減につながりました。

西尾氏の発想がユニークであったのは、都市部に流出した川上村出身男性の恋人や配偶者に着目した点です。多くの男性が、進学や就職で川上村を後にするものの、家業を継ぐために、いずれは村に戻ってくる傾向にあります。男性の恋人や配偶者にとって、川上村は定住に値する場所か。生活に不満がある女性ほど、子どもが少ない傾向にあることが調査により判明したといいます。暮らしやすさの決め手は、女性が自信を持ちながら生活できるか否かであると、西尾氏は説きます。

(川上村のレタス畑)

「男性がレタス栽培に精を出す一方で、子育て等を通して、女性は多くの他の価値観に触れる生活をしている」

時代は、大量生産から、イノベーション創出に軸足を移しつつあります。西尾氏は、レタス栽培の主要産業としての位置付けを維持しつつ、女性の持つ多感性・多様な経験が、村の一層の活性化を促すと考えました。女性が新たなビジネス等の価値創出に貢献することで自信を持ち、男性と対等に生活できるようになることが、定住につながると信じたのです。

“求む!ビジネスアイデア

「はじめに着手したのは、ビジネスアイデアコンテストの開催です。」

西尾氏は、農林水産省からの派遣という立場を活用し、政府関係機関や民間企業をスポンサーにつけて、ビジネスアイデアコンテストを開催しました。最優秀賞に輝いたのは、夫が農業を継ぐことを理由に川上村へ移住した女性でした。私達は、西尾氏の取計らいにより、当人の川上知美さんにお会いし、お話をお伺いすることができました。

(ご自身のご経験をお話される川上さん(手前は川上さん開発の「ハーブコーディアル」))

「やるからには、1位を目指すつもりで頑張ると夫に伝えました。」

川上さんは、賞金による事業化も視野に入れながら、練りに練ったビジネスプランを提出しました。プランの作成中は旦那様が言葉少なげに見守ってくれて、その気遣いが嬉しかったと言い、はにかまれました。最優秀賞を獲得したときには、旦那様は驚いた様子で一緒に喜んでくれたといいます。

(KAWAKAMI IDEA FOREST アイデア コンテスト 2017)

プロデューサーとしての支援

川上さんは受賞後、村外で講演する際に、行政や金融機関から十分なサポートが得られず、起業に至ることが出来ないという声を多く聞きました。西尾氏が身近にいて、多分野にわたる助言や、関係機関への橋渡し等をしてくれたからこそ、川上さんは事業を今日展開できるに至ったといいます。

「西尾さんには、商品に必要な白樺の樹液を採取することから手伝ってもらいました」

白樺は地域財産区管理の山林のため、樹液を採取するための許可が得られずに川上さんが困惑する中、西尾氏が管轄の林野保護組合に直接働きかけをしてくれたといいます。また、西尾氏は自身の経歴を活かし、補助金の申請先や申請方法について知識や繋がりを積極的に提供するようにしました。ほかにも、商品の加工先を探す際には、西尾氏が少量発注可能な業者を一緒に探してくれたり、商品の保管場所が不足した際には、他の家庭の冷凍庫を貸してもらえば良いと助言をくれたりしたおかげで、つまずきかける度に安堵し、前進することができたと川上さんは話します。

(行政による支援の可能性を話す西尾さん)

村の意識に変化が…

川上さんは、ビジネスコンテスト後、村内の女性が徐々に自信をつけてきていると感じています。近所の井戸端会議では川上村の今後の在り方といった前向きな話が出てくるようになり、また、自身の事業化に関する講演の際には、中学生も含めて多くの女性が関心を持って参加してくれるようになったといいます。会合の輪は現在も拡大中で、他地域に川上村の取組みについて出張講演する方も現れ始めました。村全体の意識が変わっていく中で、今後、業容拡大に向けて一層頑張りたいと言い、お子様と一緒にお話の場を後にする川上さんの笑顔が印象的でした。

なお、川上村では、育児や家事の負担を地域内の住人で補い合うシェアリングエコノミーシステムを導入しています。子育て等に追われる女性がビジネスを立ち上げるためには周りの手助けが不可欠です。川上村の取組みは、「地方創生加速化交付金の交付対象事業における特徴的な取組事例」にも選定されています。

(川上村の特産品が陳列される「マルシェかわかみ」。女性のアイデア商品も多く並びます。)

西尾氏は、川上村の「魅せ方」に女性目線を取り入れることで、村外の女性が川上村を身近に感じられるようにする工夫も凝らしています。今年2月11日に開催した20~30代女性を対象にした婚活ツアー「Girls insta tour in KAWAKAMI」は、東京の有名シェフやソムリエ、女性向けの広報等を支援する会社等と連携。婚活ツアーを、お洒落な料理やお酒とともに「インスタ映え」した写真でPRすることで、農村の地味なイメージを払拭するように努めました。また、東京ガールズコレクションでは、PRブースを設置し、レタスを使ったアイスクリーム等を使って川上村の魅力を伝えました。川上村には色鮮やかな農作物の他に、名産の唐松を利用した温かみのある校舎等、PRに有用な素材が多くあります。村内の女性に、自らの感性を最大限発揮してもらい、川上村の魅力を積極的に外部発信してもらうことが、村外から女性を呼び寄せるうえで重要であるといえます。

(「ガールズインスタツアー」(KAWAKAMI SMART PROJECT提供))

最新テクノロジーの活用

「女性」に並び、「IoT」も重要なキーワードの1つです。

川上村では、IoTを積極活用することで、農業生産の効率性を高める「スマート農業」を推進しています。企業や大学からの実証実験を積極的に受け入れることで、通常よりも安価でドローンやパワードスーツ等のIoT関連機器の導入が可能になるといいます。外国人研修生も貴重な労働力ですが、農業は収穫時期が限られているため、年間を通しての研修制度にはそぐわない側面があります。今後は、外国人研修生から、IoT活用による作業効率性の向上に生産力の源をシフトさせていくことで、農作業の肉体的負担を軽減し、後継者が就業しやすい労働環境を整備していきます。

(5年後の川上村のイメージ(KAWAKAMI SMART PROJECT提供))

“未来へつなげ”

実は、これらの取組みを行う西尾氏は、もうすぐ出向制度の任期を迎えようとしています。それでも、西尾氏は、自身が去ったあとの川上村について悲観をしていません。

「成果が十分に出てくるためには、10年単位で時間がかかります。それでも、同僚達に「いまのままではいけない」という危機意識を持ってもらえたことが、今後の取組みの継続性に繋がると信じています。」

継続性の鍵を握る西尾氏の同僚、遠藤さんにお会いし、お話をお伺いしました。西尾氏にとって、危機意識を共にする貴重な仲間です。遠藤さんは、自ら農業を営みつつ、西尾氏とともに村役場の業務に励んでいます。今現在、レタス栽培で十分な収入を得ていることを理由にあぐらをかいてはならないと、西尾氏と声を揃えます。天候等によっては、収穫量が激減するのが農業のリスクであるからです。また、植物工場の増加も脅威の1つです。

(前列左が遠藤さん。遠藤さんの畑では、比較的、高価格で販売可能なサニーレタスを栽培。私達も収穫体験をさせて頂き、みずみずしい自然の恵みに舌鼓を打ちました。)

その場で自然を味わえる体験は、単なる農作物販売で終わらない可能性を秘めています。私達の滞在中も、川上村産の野菜たっぷりのバーベキューを楽しみました。新鮮な野菜とお肉を満腹になるまで食べて、一人当たりたったの2,500円(飲み物代込み)です。バーベキュー会場からは、ロッククライマーにとって名所として知られる絶壁をよじ登る勇ましい人々の姿も目に入りました。川上村は農業だけではなく、観光資源も持ち合わせていて、観光地と農業の組合せが、一層の魅力を創造するのではないかと考えさせられました。

(西尾氏とともにバーベキューと絶景を楽しむ)

西尾氏は川上村で、我々の活動理念である「プロデューサーシップ」を実践し、地域の発展に寄与しています。積極的に助言を行い、人と人(組織)との橋渡しを行うことで新たな価値を創造する西尾氏。今回の訪問で、私達も地方創生に一層貢献するべく決意を新たにし、川上村を後にしました。次に訪問するときには、更に進化した川上村を見られることを楽しみに・・・。

Dr. Karsten Klein(The founder and CEO of KLEIN K.K.)より「サイバーセキュリティへの日本の対応」 Platform for International Policy Dialogue (PIPD) 第41回セミナー開催のご報告

NPO法人ZESDAは、「官民恊働ネットワークCrossover」(中央省庁の若手職員を中心とする異業種間ネットワーク)との共催、株式会社クリックネット まなび創生ラボ の協力により、在京の大使館、国際機関や外資系企業の職員、及び市民社会関係者をスピーカーに迎え、国内外の政治・経済・社会問題について英語での議論を通じて理解や問題意識を高める、「Platform for International Policy Dialogue (PIPD)」を開催しています。

 9月26日(火)7時30分より開催された第41回PIPDセミナーでは、リスクマネジメントを中心とするコンサルティング会社を創設・経営されているDr. Karsten Kleinをお招きし、Cyber security: How Japan can tackle the challenges「サイバーセキュリティへの日本の対応」についてお話頂きました。

 カースティン氏は、冒頭、サイバーセキュリティを取り巻く最近の社会の変化について説明されました。例えば、これまで銀行の各支店は、顧客情報等を紙媒体で記録し、銀行の各支店で管理していました。しかし、インターネットが普及した現在では、顧客情報等は中央に集約されており、集約拠点がウィルス等によるサイバーアタックを受ければ、その被害は甚大なものとなります。また、日本においては、日本語という独特な言語と日本の地理的条件ゆえに海外から標的にされることは少なかったのですが、インターネットが発達し、言語が簡単に翻訳できる現代においては、そのような障壁はなくなり、世界中のどこでもサイバーアタックのリスクが存在すると説明されました。

 また、サイバーアタックに係る脅威シナリオとして、①アクターの存在、②負の影響、③資産への影響の3点を把握することが重要であると説明されました。まず、サイバーアタックの攻撃者の存在として、従業員の不注意などに起因する組織内部のアタッカー、犯罪集団・国家主導の活動、活動家などの組織外部のアタッカーが挙げられました。次に攻撃の結果発生する不利益として、内部情報の流出、不正アクセス、サービス・データの消失などがあり、その結果生じる資産への影響として、秘匿情報や組織としての機能が失われる恐れがあることを述べられました。具体的な例は犯罪組織がつかう「キャンディー・ドロッピング」という手法を紹介されました。会社の入り口付近にウィルスに感染させたUSBを落とし、その会社の従業員が社内のPCに繋げるのを待つそうです。また、デジタルネイティブ世代つまり10代のハッカーたちの興味本位の攻撃なども提示されました。政府や警察などによる対処は限られているため、個々の会社や人が注意し、対策を取らなければいけないと説明されました。

 このように、サイバーセキュリティはあらゆる個人、企業、そして社会にとって重要な問題となっている昨今ですが、これに関し、カースティン氏から含蓄のある言葉を紹介いただきました。
「世界には二つの企業がある。ハックされたことがある企業とこれからハックされる企業だ。今後、このカテゴリーは一つに集約されることとなる。ハックされたことがあり、今後またハックされる企業だ。」

 その後、私たちが直面している脅威について、参加者同士でディスカッションを行いました。顧客情報の流出リスク、アップデート未実施が原因で脆弱となったソフトウェアがウィルスを保有していた事例などが共有されました。

 次に、カースティン氏は、サイバーセキュリティの対策について話を移していきました。サイバーセキュリティ対策を十全なものとするためには、マネジメントの対応とシステム・オペレーション上の対応が必要です。しかし、それぞれについて乗り越えるべき課題があります。
 まず、マネジメント上の課題として、経営層のトップの多くはITに慣れ親しんだ世代ではなく、CIO(Chief Information Officer)やCSO(Chief System Officer)がCEO(Chief Executive Officer)よりも立場が低いために、サイバーセキュリティ対策予算が十分に確保されないという点を指摘されました。このため、経営層においても、ITなどの新しいテクノロジーを受け入れる姿勢を持つことが重要になっています。また、多くの企業は社会的な評判が下がることを恐れて、サイバーアタックに係る情報を公表・共有することを避ける傾向がある点を指摘されました。このような情報の共有は、社会への被害拡大を防ぎ、対抗策を検討する上で非常に有益であるため、積極的に情報を共有することが時には必要だと述べられました。
 次にシステム・オペレーション上の課題として、IoTのように社会のあらゆるものが相互に繋がっていること、情報システムの構築サービスを提供するシステムインテグレーターが交渉力の点で顧客よりも優位に立っていること、特に日本において古いソフトウェアを更新せずに利用し続ける傾向にあること(Legacy System)によるリスクが挙げられました。

 最後に、サイバーセキュリティ上の課題を乗り越えていくために、私たちが組織として、あるいは個人として、何をすべきかを参加者同士で議論しました。
 カースティン氏のプレゼンテーションと参加者同士の議論を通じて、参加者それぞれが、サイバーセキュリティの脅威とそれに直面する私たちが持つべき心構えや対策について、認識を深めることができました。
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 本PIPDセミナーにおいても、会場にご協力頂いた株式会社クリックネットまなび創生ラボの皆様に厚く御礼申し上げます。