ZESDA's blog

グローカルビジネスをプロデュースする、パラレルキャリア団体『NPO法人ZESDA』のブログです。

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【書評】高橋フィデル著『特区ドクトリン―特区は国を規模としたある種の実験である』

本書はまず、特区制度の必要性について、
「恐れを抱くものに対して部分的に解放するというやり方の方が全体的な解放よりも上手く立ち回れるということを
日本人が「あ、うん」の呼吸で知っているからだと思う」と推察する。

そして、「日本人はいったんこうだと決められると、そこにあてはまった動きをする傾向にあり、
枠をはみ出した考え方が発生しにくい」と警鐘をならす。
また、だからこそ、従来の概念からはみ出したものを最初から用意することによって、
初めて新しい考え方や発想が生まれるはずである、と主張する。

これは、日本をよりイノベーションが溢れる国にしていく上で、
特区制度それ自体が有する戦略的な意義を指摘している斬新な視点だと思った。

また本書には、氏の自由な発想力による具体的な特区の例も豊富に紹介されている。
ブレスト集として楽しい。

例えば、

①産業認定特区で芸術家の町を作る
デザイナー、ゲーマー、大道芸人などに対して、特定の産業として認定を与え、所得税法人税控除を設ける制度を作ったエリア。
全国から優秀な職人が集まるため町自体に魅力が出る。文化発信の拠点となる。(地域の意思に基づき、特定の産業に特化することで、その産業の発信地として活性化していく可能性を示唆した例。)

②退職手当特区でリッチ&まじめなシニアの町を作る
退職手当に対して、所得税を減税するという特区。仕事を働き上げたまじめな層かつお金を持っている層を誘致し、アクティブな高齢者が集まることで活性化を図る。(地域住民がどの層の人たちをどのように巻き込みたいかによって、特区という制度を活用し、町の方向性を付けていくことが出来る可能性を示唆した例。)

などは面白いと思った。

さらに、著者は自由な特区の案の例を羅列するにとどまらず、
実際に特区を成功させるために必要な10の項目(例、住民の合意形成、海外からの収益確保、評価委員会の存在等)
も考察し、分かりやすくまとめている。

また、特区を社会的な課題解決の手法を試行する場と位置づけ、
特区の内部におけるスピーディーな意思決定システムの重要性を強調していたことには首肯できる。

特区ドクトリン―特区は国を規模としたある種の実験である

特区ドクトリン―特区は国を規模としたある種の実験である